中篇 | ナノ

下書きが発掘されました


「マリーとはもう話したのか」
「……一応、引っ越す前に」

砕けた会話の中で、ふと冷静がライルの表情へと戻る。
アレルヤもまた、友であり仲間であるライルのその表情に、唇を噤む。

――少し、時間は遡る。
まだ日差しの暑い日々が続く中の、暦の上では秋の頃だった。
きっかけは本当に些細なもので。
お互いずっと一緒にいたいという気持ちには何一つ変わりは無かった。
でもどうしてか、人間社会へと戻るごとに。
日常へ戻るたびに。世界に、平和だと教えられるたび。
二人の気持ちが、違うことに気がついた。
アレルヤがこうだと言うと、マリーはうんと頷く。
マリーがああしましょうと言うと、アレルヤはそうした。
お互いがお互いに影響を及ぼしている。超兵として、無意識に、お互いにお互いの意識を植え付けあっていた。
アレルヤがマリーを好きだと言う事で、マリーはそれが恋だと錯覚し、アレルヤもまた否定しなかった。
ただ一緒にいたいと願った。
そうする為に彼女に愛を囁き、捕らえ、傍を離れることを許さなかった。
マリーもアレルヤに愛を説き、愛することで、亡くした父への愛情を以って接した。
人間社会に溶け込もうと努力する二人は、やがてそれが間違いであったことに気が付いた。
世界は広かった。二人の愛情のカタチも、その世界の一つだった。許されると思っていた。
だが男と女であることが、二人にとって枷であり、重大な問題だったのだ。
二人の気持ちには揺ぎ無い愛があった。十二分に理解していた。
だから声に出すことで、語り合う事で、二人は、距離を置くことを決めた。
【普通の人間として、生きていこう。】
超兵としてではなく、ただの人間として生きるために、二人は離れることを決意した。

「――アレルヤってさ、思ってること、兄さんと話したことある?」
「え……」

思い出に浸っているアレルヤに、ライルは問い掛けた。

「話さなきゃ、人ってどうして分かり合えないんだろうな」

「マリーから伝言」

『』




20131123

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