中篇 | ナノ

七章三節 【軌跡よりも蒼く】


刹ティエ(青の激震、続き)




ティエリアの身体を葬るに相応しい場所で、思い付く所はここしか無かった。
誰かが言う愛の形だとか、誰かが描く理想の恋だとか、別にどうでもいい。
ただ、自分だけのものにしたかった。
共同墓地に埋葬して、他の誰かと共に眠るなんて許せない。
冷えきった肌を抱き込んで、熱に揺らぐ密林の中へ屠る。
ここは孤島の森の中。
冗談で言った砂漠じゃなくて出来れば湖に沈めたかったけれど、基地の飲み水としても流用されてるこの湖に沈めてはとんでもない事になってしまう。
出来れば息苦しい箱の中にも入れたくないし、火を放ち荼毘に伏すのも避けたい。
ただ、土へ。
掻き抱いた肌は蒼白で、唇だけが赤く熟れている。
その中の、粘膜だけがまだ赤を纏っている。
「あの時、言えなかったが」
ふと、思い出す。
カーテンのように揺れる、薄手の紅い裾。
そこから覗く白く細い足首。
その白さだけは今も変わらない。
……熱に浮かされている。
「赤も似合っている」
そっと指先を手に取り口付けた。
「……綺麗だった」
返事は無い。
何故ならこれは抜け殻だからだ。
でもあの凛とした姿が忘れられない。
脆く今にも壊れてしまいそうな部分を払拭して、涙を流すまいとその細い体躯で戦っていた。
お前が誰を想っていようとも、誰を救おうと考えていようとも、それを超える広い愛を持ち得たい。
滴る汗が、今こうしてお前に降り注ぐように。
「綺麗だ」
紅い花を摘んでその死体へ散らす。
黄色く何も知らぬ無垢な花では無い。
赤く紅く、そして何よりも青く。
蒼く。
眠れ。

10/09/21

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