中篇 | ナノ

六章三節 【天邪鬼なのはどっち?】


たとえば、お前がそれを望むのなら。


「ハレルヤ、お願いがあるんだ」
厚い硝子越しに、アレルヤはあるものを見詰めていた。
ガンダムハルート
アレルヤとマリー、そしてハレルヤ、ソーマという超兵の反射に合わせて作られた、新しいアレルヤのガンダム。
その隠された六ツ目と、そして自分自身の右目に問いかける。
《んだよ》
まだ少し眠りと覚醒の狭間で揺らぐハレルヤは、短く返事を返した。
「マリーを、守れる力が欲しい」
アレルヤはその銀灰の輝きを真摯に金灰に向ける。
「僕の脳量子波感知は精度が低い」
最早己の弱点ともいえる部分を、アレルヤは自覚していた。
超兵仕様の機体に乗るには、些か己は力不足なのだとアレルヤは考えている。
「だから…君の力がどうしても必要なんだ」
この先、それが仇となるのは目に見えている。
マリーの、そしてソーマの…みんなの足手纏いにだけはなりたくないのだ。
戦えない己が、こうしてガンダムマイスターを名乗れるのは、みんなのお陰だから、
《それで?》
「…正直に言うよ。脳量子波の制御を僕に譲渡して欲しい」
二人の間に隠し事は不要だと、アレルヤは真っ直ぐに背後で泳ぐハレルヤを硝子に映したまま見詰めた。
《よく言うぜ、この甘ちゃんが》
「マリーは、ソーマと完全な融合を果たしている」
だから、今《僕》に必要なのは、脳量子波を制御するという力。
しかしそれは、アレルヤの中の思考であるハレルヤが司り、ハレルヤはアレルヤが反射のままそれを抑圧してしまうのを危惧していた。
逆もありえるのだ。
反射のまま、感情のまま、意図してる分より脳量子波を解放してしまうかもしれない。
《"あの時"みたく、もう一度融合しろってか?》
アレルヤとハレルヤが融合を試みたのは、六年前が最初で最後だった。
二年前は脳量子波が使えないアレルヤをハレルヤが守っていた。
しかし今は違う。
ダブルオーライザーのトランザムによって、アレルヤの脳量子波は回復した。
だからこそ、アレルヤは一人でも戦えるようになりたいのだと、ハレルヤに訴えたのだ。
《それとも、俺に死ねというのか》
「それは違うよ、ハレルヤ……」
牙を剥くハレルヤをアレルヤは否定した。
「僕は、"僕"自身を守りたいんだ。ハレルヤ、君の手を借りなくても、君を守りたい」
《あれもこれも、欲張りだなお前は…》
「それはハレルヤもだろう?」
アレルヤの言葉に、違いない、とハレルヤは高らかに笑った。
《…あの女超兵に出来て、俺たちに出来無いなんて事は無い。乗るぜ、その話》
「…ハレルヤ!」
《ただしひとつだけ条件がある》
人差し指でハレルヤはアレルヤの後頭部を突き刺して、笑いを止める。
《お前が死のうとも、死に急ぐようなマネしたら、俺が戦う。俺が生きる》
「いいよ。この命に変えても」
半分は、君の命なのだから。
そう言ってアレルヤは笑った。


2011/01/23 UP

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