中篇 | ナノ

四章二節 【君だから幸せにしたいんだよ】


ニールとハレルヤ。ハレ→アレ?

二人がいわゆる恋人同士という関係になってから暫くして、ハレルヤにニールが言った言葉があった。
「お前は今後、どうしたいんだ?」
それは大分前にもアレルヤにも尋ねた言葉で、ハレルヤはアレルヤが答えた戯言を思い出す。
(それは、この戦いが終わったら、という話かい?)
(そうですね、もし生き残れたら……何らかの形で罪を償いながら、一人静かに老いたいです)
それに対してニールは、アレルヤらしい、と頷いていた。
どう答えればいいのだろう。
ハレルヤは考えるが、言葉が思い付かない。
大金持ちになりたいだとか、家庭を持ちたいだとか、そういった具体的な考えが浮かばない。
そもそも自分は、戦う為に生まれ戦う為に生きている。
それならば戦う事を止めてしまった己は、何だと言うのだろう?
ハレルヤは、考えるのを止めた。
「……馬鹿らし。」
そう言い残してニールの前を立ち去ろうとする。
しかしその前に、肩を掴まれてこちらを向かされた。
「俺はお前にも幸せになって欲しいんだよ」
真摯な視線は、まったく嘘偽りが無かった。
ハレルヤにはそれが脳量子波で解ってしまい、尚更腹立たしく思えた。
「俺達は死ぬ為に戦ってるんだ。
幸福?そんなの世界を変革するテロリストには不必要だろうが。狙撃手さんよ」
矛盾しているとハレルヤは想った。
目の前の男は、愛だの幸せだのアレルヤに言う癖に他の誰かを愛してやがる。
死にたがりのアレルヤよりよっぽど死にたがりで死ぬ覚悟も比では無かった。
「たとえ俺達が死ぬ運命にあっても、アレルヤは「生き残ったら」の話をしてくれた。
だから、ハレルヤ
もしハレルヤの幸せが、俺から与えられないものだとしたら、その時は……身を引くよ」
それが何からか、ハレルヤにはよく解った。
だから口角が上がっていく。
「よく解ってんじゃねえか」
肩を掴むニールの手を払い、ハレルヤはその場を立ち去る。
これで一つ、一時的だろうがアレルヤの幸せが消え失せた。
ただ殺す為に生きている。
そんな俺達に幸せなんていう未来は不必要なんだ。
「……っは、ハハハハ!あははははははは!!!」
ハレルヤは高らかに笑った。
これでもう何にも憚られない。
ただ生をまっとう出来る。
恐れるものは後ろで嘆く男以外何でもなかった。


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