中篇 | ナノ

三章二節 【祈り】



祈るばかりで…君は何もしない。
ただ指を組み、口付けるばかり。
そんなことで、たたかったことになるの?
君は強くそしてしなやかな美しさを持っている。
なのにその美しさや強さを持て余して嘆いている。
断罪するのが恐ろしくて、君は鎌を振り下ろせずにいた。
地の底から君を見上げる。
輝くのは刃か、銃口か、君の瞳か。
今の一瞬だけ、君が綺麗だと思おう。
醜く穢れたこの世を刷新する美しさをこの子供達は持っている。
いつまでもその美しさを隠そうとする君は、誰よりも輝いている。
月のように、星のように。
だから祈るのを止めておくれ。
早く引き金を自らの力で引いておくれ。

「きみのまねだよ、これは」

組んだ指に、口付けて。
解かれる指は傷つけて。

「きみのまねだよ、これは」

静かに声が空間に響き渡る。
神に祈るように、埋葬される亡者のように指を組んで愛しい者へ贈る口付けのように、そこへ口付ける。
君が昔そうして神に祈ったように、こうして僕は今君だけに祈った。
戦える強さを、どうか僕に下さいと。

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