「え?ちょ、なんで親御さんに私の家の電話番号バレてるんですか。苦情こっちにきちゃうじゃないですか、休みなのにモンペの相手なんてしてられませんよ」 電話がかかってくるようになってきてキーボードから手を離す。片手間に煎餅をばりばり食べながら話半分に会話ログを見ていく内に話が進展していった。本物のM(性癖)や本物のM(マダオ)が仲間になったようだ。碌でもないですね、教え子たちには見せられない。 【「MってMADAOの頭文字のMだったのね」】 【「なる程、暇もてあましてゲームに逃避するうちに最強のハンターになっちまってたんだな」】 【「マダオって言葉完全に浸透してますね」】 【「このカグーラ・ジャスティスが流行らせたネ、泣いて崇めるヨロシ」】 【「カグーラ=ジャスアントじゃないでしたっけ君の名前」】 【「む!貴様何奴だ!私の正式名称を知っているとは只者ではないアル」】 【「ログを読めば皆只者ではなくなりますよ」】 【「ネットゲーム内と現実世界のパラメーターは反比例する。ゲーム内で幅をきかす勇者ほど現実世界では暇もてあましたダメ人間であるということが多い。伝説のハンターとくれば伝説のダメ人間も出てくらァ】 【「その点でいえばウチのパーティ最強ですよ、ダメ人間だらけです。……大丈夫なんですか」】 【「ログってどうやれば見れるアルカ?」】 【「歯車みたいなアイコン押してから気になるキャラにカーソルを合わせて左クリック押してみください」】 【「ヒビ入ったヨ、見れないアル唯一王お前騙したな!そんなんだからイー○イ進化系の中で唯一パッとしないんだ唯一王このヤロー!」】 【「パソコン落としといてって言われて床に落とす機械音痴ですか君。唯一王馬鹿にしてたらその内泣きを見ますからね、何時か習得してみせますからねフレアドライブ」】 【「店員に怒られたアル!私のか弱いメンタル傷ついたから慰謝料出せゴラァ!」】 【「慰謝料は無理ですが謝罪はします。ごめんなさい」】 【「――居た!真人間いた!唯一王さん本当にレベル一だよ!仕事が忙しくてレベル上げが出来ない社会適合者だよ!!追いはぎはしててもこの中だと断然マシだ、此処にいる奴らがダメ過ぎて神に見える!」】 「……後で菓子折り持っていこう」 志村くんのツッコミはリアルでもネットでも変わらず輝き放っている悲しい姿を見て目頭を押さえる。万事屋さんや神楽ちゃんに日々揉まれてるんだろうな、と頷いていると再び電話が鳴りだした。……まさか。受話器を取ったらクソモンペ第二陣が出撃してきた。 「はい、はい、ええドライバーですか……それでしたら今丁度万事屋銀ちゃんが対応中でして。知りません?銀ちゃん。死んだ魚の目をした凄い人なんですよ」 万事屋さんに全てを押しつけて通話を終える。頑張れ、銀時。応援してますよ。 ふと画面に視線を戻したら唯一王だけぽつんと神殿の前で佇んでいた。おっといけない、通話に集中しすぎて置いていかれてしまったようだ。そんなに長電話はしていないから今から追えばまだ間に合う筈だと高速連打。ダッシュ!ダッシュ!ダッシュ!あれ、チンポが倒れてる。 【「チンポさん大丈夫ですか?」】 【「ちょっと待ってくれ、今体力ゲージがほぼ零で動かせないんだ。あと俺はフルーツチンポ侍Gだからそこんところよろしくな」】 【「名前ややこしいですね。皆さんは今どこに?」】 【「ゲーマー星人と一緒に先に進んでる、一本道の筈だから追いつけるさ。アイツが改名すればいい話だというのにまったく傍迷惑な奴だ」】 いや、チンポの方が問題あると思いますけど。 【「ところで、途中から消えていたが何をしてたんだ?」】 【「リアルの方で電話がきちゃってその応対をしてました」】 【「成程、それはしょうがないな!」】 【「肩貸しますよ、一緒に行きましょう」】 【「それはありがたい!感謝するぞ唯一王(笑)!」】 【「私の名前は唯一王です。次語尾に(笑)付けたらその真っ赤に染まったHPゲージにトドメ刺しますよ」】 というかなんでゲーム内でも裸になっているんでしょう。露出癖でもあるのかな……現実でも散々脱いでるのに……志村さんがいない状態でも脱ぐんだ…… 【「あれ?なんか急にクシャミが。風邪引いたかな、ドライバーなのに」】 【「大丈夫ですか?その状態で薬が効くかも不安ですし早く事件解決しましょうね」】 【「ああ!俺達が協力すれば怖いものなしだ!」】 底なしに明るいな局長さん。 洞窟を進んでいくとゲーマー星人らしき二匹と万事屋メンバー+αが対峙していた。少々険悪な雰囲気だ。 【「人にモノ尋ねる時はまずてめーから素性を明かせや」】 【「あん?俺達はな、 ドライバーをやってます」】 【「コイツ等も被害受けとるんかいィィィ!!」】 事態が一向に進まない。どうしましょう、親御さんに万事屋さんがなんとかしますよははは〜少々お待ちください〜〜〜って言ってしまった。クソ、万事屋さんのせいだ。 【「オイオイオイちょっと待てよ、俺嫌な想像しちゃったんだけど。ヅラはヅラでゴリラはゴリラ、このMがさっちゃんであのMはマダオだった……まさかこのゲームの中で会った奴等全員現実の知り合いなんてわけないよな?俺の考えすぎだよな?オイ」】 【「ないないない!ないですよ銀子さん!だってこのゲーム銀河中からゲーマーもニワカも関係なく流行って集まってるんですよ、どれだけの人口密度だと思ってるんですか!」】 【「リアルで会うだけでも我慢してるのにゲームででも会うとか最悪アル」】 【「えっ!?もしかしてアンタ御向かいに住んでる奥さんだったりする!?今度ワンちゃんもふらせてください!」】 【「私は男です」】 【「じゃあ旦那さんの方か!」】 【「違いますって」】 【「ええええ!?まさかワンちゃんご本人!?」】 【「御向かいから離れてください」】 【「おい、勝手にそっちで盛り上がんな。俺らの素性を明かしたんだ、今度はてめェ等の番だろうが」】 【「素性ってただのドライバーだろーが。ドライバーの何が素性なんだ言ってみろやゴラ」】 【「いや、それって今更ですよ……今まで僕ら散々スルーしてきたじゃないですか、普通に"ドライバーやってます"で意思疎通してきましたよね」】 【「運転手の方かも知れねェじゃねーか!それくらい理解しろよダメガネ!!」】 【「その言葉バッドでアンタに打ち返すわ!!ちょっと前の発言スクロールして見返せよ!!」】 未だにHPゲージが赤いままのチンポに回復アイテムを渡して壁に寄りかからせてからポンチの傍へ。銀子が持っていた大剣が血を滴らせて放置されている上にポンチは明らかに斬られていた。ハシャぎすぎたせいですよ、桂。 【「死にかけてますね、ポンチさん」】 【「ポンチじゃないフルーツポンチ侍Gだ!ちょっと待ってくれ、今体力ゲージがほぼ零で動かせないんだ(汗)」】 【「名前ややこしいですね」】 【「あの者が改名すればいい話だというのにまったく傍迷惑な奴だ(怒)」】 このやり取り少し前にしたんですけど。そっくりさんかよ。 【「ところで、途中から消えていたが何をしてたんだ?」】 【「リアルの方で電話がきちゃってその応対をしてました」】 【「成程、それは仕方がないな!」】 【「肩貸しますよ」】 【「それはありがたい!感謝するぞ唯一王(笑)!」】 【「私の名前は唯一王です。次語尾に(笑)付けたらその真っ赤に染まったHPゲージにトドメ刺しますよ」】 コピペと一部分削除するだけで会話成立しちゃったんですけどどれだけ似てるんですかアンタ等。 【「あーもう!結局コイツ等本物のゲーマー星人じゃねーし無駄足だったじゃねーかよ!」】 銀子越しに万事屋さんの魂からの叫びが見えた。……さっきからぎゃあぎゃあ騒いでばっかで、放置してたらもう暫くこの馬鹿騒ぎ続きますよね。一肌脱ぐか。パンパン、と手で音を鳴らす。洞窟の人達の視線が集まったのを確認してから唯一王を喋らせた。 【「皆さん一先ず落ち着いて。状況を整理しましょう」】 【「誰ですかいオメー、影薄すぎるぜ全く気付かなかったァ」】 【「まずそちらの仲良し三人組は万事屋銀ちゃんの三人組です、この場に居る人ほぼ全員知ってるかと思いますが」】 【「えっ!?まさかこの銀子さんも万事屋メンバーの誰かだったのか!?」】 【「アンタ気付いてなかったんかい!あからさまに男口調だったろ!」】 【「こちらの眼鏡をかけた女性が幕府に雇われた心強い味方で、私と同じくドライバーになっているわけではありません。そうですよね?」】 【「ええ。貴方は知人がドライバーになってしまっただとか」】 【「そうなんです、可愛い教え子の身に起こった災難が心配で夜も眠れません。出来るだけ早く解決したいのですよ」】 【「……ちょっと待て、教え子?今までの流れ的に、もしかしてお前は」】 【「ねえねえ銀ちゃんなんか目がショボショボしてきたネ、疲れた」】 【「ゲームは一日一時間だぞチャイナ娘。いやオッサン。つーかまたお前等かよ、この腐った縁どこまで続くんだ。今すぐブッた斬りてェ」】 【「で、今死にかけてるポンチはただのニートですので気にしないでください」】 【「ポンチでもニートでもないフルーツポンチ侍Gだ!!」】 「……」 【唯一王はプレイヤー腕力能力値アップアイテムを使用しました】 ゴッ!ゴッ!ゴッ! さて。 【「皆さん、個性豊かなのは良い事ですがいい加減収拾がつかないので大人しくしましょうね」】 【【【「「「はい」」」】】】 銀子とポンチとチンポの三人に拳骨を落とし、首元まで地面に突き刺してからニコニコと見下した。 桂と局長さんはあからさまに話を聞いていなかったからであり、万事屋さんは神楽ちゃんの教育不届きと唯一王(笑)をたった一回でポンチとチンポに浸透させたことが理由だ。他は普段が真面目だったり行き過ぎてはいなかったりで見逃す。 * * * 「暫く休暇だときいたんだけど。何処に行くの、松下雪成」 「オフ会です」 「私も行く」 「えっ」 ←(2/3)→ 戻る |