気まぐれ部屋 | ナノ




そこそこ重い物体が胸に乗っている。圧迫感に魘されながら目を覚ますと、案の定ジョジョが縋り付くように俺の胸板にぴったりとくっついて眠っていた。

「……ジョジョ」

小さく声をかけるが反応はなかったので、起こさないようにジョジョをそっとベッドにズラす。起き上がろうとするがジョジョの両手ががっしりと俺の服を掴んで離さないので、持ち上げかけた頭を枕に戻す。

(愛らしいが……どうしたものか)

三十分程度で済ませる昼寝だった。時計を見遣ればベッドに寝転がってから三十分が経過しようとしている事が分かる。ほぼピッタリに起きれた己を褒め称えつつ、起きる様子を見せないジョジョを放置するのか無理やり起こすのかで悩む。

「むう……う〜、う」
「どんな夢を見ているんだ」

眉間に皺を寄せむにゃむにゃ不明瞭な寝言を言うジョジョ。いつのまにか頬の筋肉が弛みだらしない顔になっている事に数十秒経ってから漸く気付き、ぐしゃりと髪をかきあげた。

「最近の俺は気が緩みまくっている。しっかりしろ、アデル・ブランドー」

頬を叩き、きりりと表情筋を固める。

「アデルゥ……」

すやすやと夢の世界に旅立っているジョジョの口から零れた俺の名前に、思わず反応してしまう。寝ている者と会話をするのは休息をとっている脳に対する妨害行為である。無意味であってもどうした、と返したいところだがぐっと我慢した。

「……キス……うぅぅっ」

「は?」

今なんと言った?キス?ジョジョが、キス?何故故に?どんな夢を見ているんだ。
処理が追いつかず、ジョジョの寝顔をまじまじと観察する。まごまごと口を動かし、ジョジョの眉間の皺は相変わらず深いまま。

「もっと……」
(……キスを?)
「………………してよぉ」

ぼそりと、だが確実に耳に届いたジョジョの寝言に、俺はジョジョが起きたらとにかく滅茶苦茶キスをしようと誓ったのだった。嫌がって抵抗しても、そりゃあもう滅茶苦茶にである。所詮寝言だろうと言うなかれ、過程や方法などどうでもよくそれを言われたという事実だけが重要なのだ。

そんなアホな事を考えている間に休憩時間の三十分などとっくに過ぎていたのは言うまでもない。


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