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「"あそんで!"」
俺が聞こえている声と他人が聞こえている声には決定的な差がある事を俺は知っている。
「"あそんでっ、ごしゅじん!"」
それを俺はとても憐れに思う。
「『良いよ、早速ボール遊びをしようか』」
あ、どうも。アデル・ディアスと申します。
動物、特に狼が好きすぎてどうしても彼らの役に立てる職業に就きたいと思っていたら何時の間にか動物関連の資格を沢山とっているくらいには動物好きです。
動物の関われる職業も色々ありましたが、やっぱり私は彼らが傷を負った時に癒す事が出来る獣医師の道を選びました。消えかかった彼らの命を紡いでいくことが出来る喜びは言葉にすることが出来ません。
とまあ、俺の自己紹介はこんな感じだろうか?真面目で硬い口調でいると皆止めろよそんなのって吠えるからあんまりしないんだよね。
でも俺の気を引こうとして一生懸命鳴く皆可愛い……!可愛くない?可愛いだろ?特に狼!ぐるるるって牙を剥き出しにして獰猛な顔になる瞬間とかは凛々しくて本当見惚れちゃうくらいだけどな!
「"みてごしゅじん、とってきたよ!"」
「『おやまあ、流石グレンだ。よしよし』」
まだまだ子犬のグレンは円らな瞳をキラキラ輝かせて俺を見上げる。可愛すぎて辛いっていう。
「『もう一回……ってそろそろ昼だな?ご飯にしようか、グレン』」
「"カリカリだいすき!"」
「『お前はカリカリをよく食べてくれるから助かるよ、他の奴は好き嫌い激しくてさぁ』」
ぱたぱたと尻尾を振るグレンの頭をぐりぐり撫でる。もっとやって!と尻尾の動きが早まった。くっ俺のツボを刺激してきやがる、こんなのもっと可愛がるしかねえだろうが!高速なでなでだ!
「『アデルさんそろそろ次のプログラムに移らないと』」
うっせえ今それどころじゃねえんだよ!!
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