気まぐれ部屋 | ナノ




世の中ってクソだわ。
そう結論付けられたのは、我ながらとても遅かった。なんてたって、その時には人生を繰り返して二週目途中の24歳だったのだから。とっくに成人済で身の程も弁える年頃を過ぎてからやっとこの事実を認められた俺は頭がだいぶパーだった。

ドンキホーテファミリーの名が北の海にだいぶ轟いた時期に、俺の元から逃げたロシナンテが現れた。誰かに乱暴でもされてたのか、服もボロボロで身体にもいたるところに傷がついていた。
……まあ、この世界の知識を持っている俺からしてみれば、ファミリー壊滅の原因の一つがやってきたようにも見えた。

しかし、腐ってもロシナンテは俺の大事な弟である。言い方は悪いがデイダラの代わりとして大切に慈しんで愛を与えたのだ。怪しさ満点で、事実裏もあるわけだが受け入れた。「ロシー、久しぶりだな」兄弟再会のハグ。をしようとした瞬間、俺は気付いた。
ロシナンテの目の奥に存在していた、俺を拒絶する感情に。
最高幹部連中はその感情には気付かなかった。あくまで、兄の俺だけが気付けた。最高幹部たちがロシナンテを疑うのは、状況も怪しくロシナンテ本人を信用できないからであり、あくまで『受け入れ難い』という判断に留まっている。もし俺と同じようにロシナンテの感情に気付けたら、罷り違ってもロシナンテをファミリーに受け入れたりなんかせず殺そうとしていただろう。

兄だから気付けた。
兄なのに、弟からその感情を向けられた。

今までの努力は、多かれ少なかれ他の要因で打ち砕かれてきた。家族を救おうとしても、逃げようとしても、何もかもが無駄になった。俺は家族を守りたかっただけなのに。
俺は、ロシナンテ、お前を守って来たのに。
別に御礼が欲しかった訳じゃない。(温もりが欲しかった)
家族がいれば原作なんてどうでもよかったんだ。(愛が欲しかった)
俺はドフラミンゴじゃないのに。それでもお前は俺をドフラミンゴと同じように扱うんだな。
ああ、畜生が。
母が死んで父が自殺して、弟からは否定され。
どう足掻いても、世界の運命から逃げられねえ。どう足掻いても、俺は中身だけが違うドフラミンゴだと突きつけられる。

少しでも希望を持って努力して、それを無残に吐き捨てられるくらいなら。最初から諦めてレールに沿うことだけに務めていた方が楽だった。

世の中ってクソだわ。
そう結論付けた瞬間、俺の中に存在していた何かの最後の一本が切れた。


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