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水切りに向いてそうな石があったので拾ったら、何と交配ポケモンのメタモンでした。
……あれ、なんか違うな。
えーと……ああそうそう、実は拾った石はメタモンの“へんしん”という技だったのである。
……違うかな。
んーと、メタモンが“へんしん”で石になっていたのだ。
よし。これなら合ってるかな。
「君は都合の良いポケモンなので、悪い人に捕まっちゃ利用されちゃいますよ」
【メタ?】
「例えばロケット団とかー、廃人とかー、石マニアの人とかー」
【……メタァ〜】
あ、その首を傾げる動作可愛い!
* * *
「キングさん、ヤーさん、この子と遊んであげて下さい」
モンスターボールから外に出されると、紫色のブヨブヨした変な同種が変な格好をしていた。あら、新入りかしら。
【貴方、名前は?】
【ぼく?ぼくはね、めたもんっていうんだって】
【メタモン、ねぇ】
キングは社交性がゼロで、初対面のポケモンとは絶対に話さないため必然的にワタシが話しかける事になる。
己の名前はなんだと聞くと、メタモンだと返ってきた。
メタモン……聞き覚えがある。確かアデルが『好きな種族の子供を作る為にはタマゴグループについて覚えなきゃいけないけど、メタモンがいればそんな作業はしなくてOK』って言ってたわね。つまる所、人間にとって便利な存在である、と。
「わあ、三匹とも早速仲良しさんですねぇ」
アデル、少なくともワタシにはキングとこの子が仲良くしているようには見えないわよ。一方的に無視して、無視されてる状況よコレ。
【言葉が通じないのはやっぱり面倒ね……】
でも、どうしようもない問題なのよね。
「キングさん、ほら、メタモンですよー。ぐにぐにしてますよー」
【近づけんな】
【うぬぁーうぬぁー】
あらあら。俺様かっこわらいかっことじなキング様でもやっぱりアデルには敵わないわね。押しつけられてる姿がとっても滑稽よ。
ま、この子は柔らかそうだから痛くはないってだけマシよね。
我慢しなさい。
「あ、ヤーさんもやりたいですか?」
【えっ】
「あれ、嫌ですかー?」
【いんや。やりてェってよ】
すかさず嘘をつくキング。
うざったいったらありゃしないわ。
【けんかはだめだよぅ】
【貴方は黙ってなさい】
【えー】
……まだ生まれたばかりなのかしら。
何だかアデルみたいにぼんやりしてるし、危なっかしそうね。
「やっぱり思っていた通り、メタモンって柔らかいなぁ。いいなぁ、欲しいなぁ」
あら。
あらあらあら。
アデルが自ら『欲しい』なんていうの、久しぶりに聞いたわ。なんて珍しい。こんなぼんやりとした子を……まさかシンパシーでも感じたんじゃないでしょうね?
【おなかすいたー】
「なんだかお腹がすいたなぁ」
【【……】】
――アデルが1匹増える……
アデルに関してだけ同時に同じ事を考える事ができるキングとワタシは、これから先増すであろうであろう気苦労を察して、溜息がシンクロした。
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