気まぐれ部屋 | ナノ




「馨お姉ちゃん!今日おうちにあそびに行ってもいい?」
「良いよ。沢山人がいるからビックリするかもね」

ランボにビアンキにイーピンに……本当に増えたからねえ。三人暮らしの時は二階は必要ないんじゃと思ったけど、今じゃ良い感じに空間が埋まってってるし。

「じゃあ一度亜樹ちゃんの家に寄ってから行こうか」
「うん!」
「よし、競争だ!」
「まけないよー!」

二学年下の後輩の子とダッシュで下校し、ランドセルを置いてから一緒に私の家に向かう。
家が遠目から見える距離まで近付くと異変に気付いた。黒服集団が我が家の前で屯している。

「お姉ちゃん、あれが……?」
「ちょっと違うね。知らない人たちだ」
「こわいよお……」
「大丈夫、大丈夫。居候の知り合いだと思うから」

ぎゅっと裾を握りながら私の後ろに隠れる亜樹ちゃんの頭を撫で、黒服集団の前に立つ。

「すいませーん、そこの家に入れないので横にずれてください」
「ん?悪いなお嬢ちゃん、今は沢田家の人間しか」

「ぎゃあああ!!」

一際目つきの悪い男性が振り返って対応されたので亜樹ちゃんが泣いてしまった。わんわんと大声で泣いて服を引っ張り、逃げようとする亜樹ちゃんを引き留めて宥める。よしよし、怖いねー。でも顔が怖いだけだからね、泣き止んであげようね。黒服集団も困ってるからね。
ある程度声は小さくなったが、亜樹ちゃんはまだ泣き止まない。うーん、これは今日の遊びはお流れにした方が良いかもしれない。とりあえず場所を移動しよう。

「馨!」

亜樹ちゃんの手を握り亜樹ちゃん家に連れて帰ろうとした時、遠くから見知った声が聞こえた。

「お前ら……馨と亜樹ちゃんに何する気だよ……!」
「兄さん」

否定しようとしたが、兄さんから吹雪くブリザードの尋常じゃない肌寒さにあっこれアカン奴だと覚った。




「あっ、もう一人の方も帰ってきたか。オレはキャ……リボーンの教え子だったディーノだ、ツナの兄貴分ってとこだな」

もう完全に亜樹ちゃんと遊べる雰囲気ではなかったので黒服集団は兄さんに任せて亜樹ちゃんを家まで送り返した。「ころされちゃうよ!行っちゃだめ!」と必死に止められたけど、なんとも言えなかった。あれ、マフィア関係者だろうしな……殺されないよって断言できないところが辛い。

「ホテルはとってあるんだがリボーンから宿泊を進められてな、一日だけ世話になるぜ。よろしくな、馨ちゃん!」
「自分の家だと思って寛いでくださいね、ディーノさん」

我が家に戻ると黒服集団は消えていたがどうやらこの人の部下だったようだ。兄さんのディーノさんを見つめる瞳が冷やかである。でも追い出そうとはしてないし、ビアンキちゃんやシャマルみたいに一線を引けるタイプのマフィアなのかな?
笑って一礼し、顔をあげると申し訳なさそうな雰囲気のディーノさんと目が合う。今度はディーノさんが頭を下げてきた。

「悪いな、さっきは……出来るだけ厳つくない奴らを連れてきたつもりだったんだが。女を泣かせるなんて最低だぜ」
「私はなにもされてません。外見だけで人を判断するのはよくないと教えておきましたし、次は問題ないと思います」
「おお……その年で随分としっかりとしてる」
「お前のガキの頃とは大違いだな」
「なっ!リボーン今その話する必要ねえだろーが!?」

リボーンとディーノさんのやり取りを見ていると確かに兄さんとの日常にそっくりで、元教え子だという話は本当だということが分かる。

「馨、ディーノさんは結構良い人そうだから危険はないと思う、大丈夫だぞ」
「うん。だと思った」
「え?」
「兄さんが滞在を許してるから。だから大丈夫なんだなーって」
「馨……!!」

その後、ディーノさんのペットのエンツィオという亀が風呂を食べて壊してしまったので数日間銭湯通いになることになった。しかも部下の前でないとドジっ子と化すようで、ことあるごとにすっ転ぶディーノさんに巻き込まれて私が床と友達になった時は……兄さん、あれぐらいじゃ私もなんともないし自重してね。

「こいつは部下がいねーと駄目なんだ。ツナの妹がいねーと家事も掃除もなにも出来なくなるのと似た感じだな」
「わあ、ほんとだそっくり」
「だからそんなことねーって!馨ちゃん嘘だからな嘘!」
「マフィアの体質とこれを一緒にすんな!!全然違う!!」


prev / next

[ back to top ]



×