今日、吾輩は日課の散歩に出かけたのである。
吾輩の散歩先は色々なものがあるのである。今まで見たことのないものが沢山あって、これだから散歩はやめられないのである。
今日もそうしていると、黄色の髪をした男が黒色の髪をした男に怒られている姿を見てしまったのである。
先輩すんませんっス、と言っている姿を見るに、あの二人は先輩後輩の関係なのであろう。
うむ。男はそれでいいのだ。
男は叱られて成長するもの。
男は怒鳴られて成長するもの。
男は失敗して成長するもの。
叱られたことがない男など存在しない。怒鳴られたことがない男など存在しない。失敗したことがない男など存在しない。
青春をしているのであるな、あの男たちは!
「うう……今日はマジでヘコんだ……」
む。
どうやら落ち込んでいるようだな、あの黄色の男は。
……ふむ。
よし、成功するかどうかは分からないのであるが、人生の先輩として吾輩が人肌脱いでやるのである!
「わんっ」
「ん?……犬?」
「クゥーン」
まず、普段は滅多にしない鳴き方で黄色の男を立ち止まさせる。
「わあ、なんだかこの犬黒子っちに似てる」
くろこ?水色の主人と同じ名前であるな。
名字なのか名前なのかの区別がつかない、よくわからない名前である。
赤色の主人と同じく大きい身長をもっている黄色の男は、赤色の主人と違って犬を怖がらず吾輩の頭を優しく撫でてきたのである。
「わふん」
この男、中々できるであるな。
そこ、そこ、気持ちいいのであるぅ……
「あー、黒子っち似のわんこ見てたら癒された!ありがとな!」
いやいや気にするなである。
吾輩も良い思いをさせてもらったのである。win-winである!
ポン、と男の手に吾輩の肉球をのせ、この男にされた時と同じように撫でる。
「く、くすぐっ、たっ」
「わんっ!」
吾輩は珍しく、表情を崩して犬なりに男に笑いかける。
元気を出すのであるぞ、黄色の男よ。
「……黒子っちみたいに男前っスね、お前……」
何故照れてるのである?
『乙女すぎ』である!(うーむ、吾輩は何も変なことなどしていないのであるが……)
後退! 前進!