吾輩は今、げーむせんたーという娯楽施設の扉の近くに座っているのである。
人間が出たり入ったりする度に耳がキーンと痛くなるので、扉の前にいるわけにはいかないのである。
沢山いる主人のうち、仲が良い3人組が今げーむせんたーの中で遊んでいるらしいのである。
もう30分ほど立つのであるが、全く出てくる気配がなく、どうしようか迷いつつもたまに吾輩に構ってくる小さな女の子や男の子たちと遊んでいたのである。
更に数分ほど経つと、やっと主人たちが出てきたのである。
「ああ……負けた」
「何で何回もクレーンやっちゃったんだろ……」
「クッソォ、アクションゲーム難しすぎ!」
「わふ?」
アクション、ということは中で運動でもしてきたのであろうか。
しかも難しい?それはなんとも興味深いのである。
しかし、吾輩は犬。
それは過ぎた願いなのであるな……
「うわああああああんにごおおおおおお!」
「わん!」
五月蠅いのである、茶色の主人よ!
思わず飛び退いてしまったのである!
「にっ……二号に、きらわ、れた……」
「いや、あれはどう見ても驚いて引いてた」
「落ち着けよフリ」
「ほ、本当か?」
……む?何故吾輩を見るのである?
「にごー……お前、俺のこと嫌いじゃない、よ、な?」
「わふんっ」
嫌いなわけないのである。
しかし、人間に犬の言葉は理解できないのであるからして、吾輩は頷く代わりに茶色の主人の足下へ寄り添う。
「に、二号……!!大好きだぁあああ!」
「ぎゃんっ!」
だから、いきなり大声を出すのは止めるのである!
『惜しすぎ』である!(そんなにげーむせんたーで悔しい思いをしたのであるか!)
後退! 前進!