サンかよ

その氷を溶かすのは僕の役目だとか




ひたりと思い付きに、かよ子はそのつま先を彼の筋肉で締まった足につけてみる。奴のでかい図体がびくりと不似合いに揺れ、それからしかめた顔(マスクって言うのかしら)を突っ返された。
「冷てーよ、バカ」
 なに、冷え症かよ?とかなんとか言いながらこちらに向き直る彼に、かもねと頷く。いつもはそうでもないのだけれど、今夜はすっかりつま先が冷え切ってしまい、まるで氷のようだった。ふーんと返ってくる答えはあまり興味もないように聞こえ、かよ子は氷の足を大人しく自分の布団へと引っ込めた。これ以上やって変に機嫌を損ねるのも上策ではない。
「おい、足」
「何?」
 もう引っ込めたわよ。そう視線を寄越すかよ子に、彼は続けた。
「貸してみっつってんだよ、ほれ」
 同時に突き出された彼の両掌は、かよ子が考えるより早く強引に、彼女の足をさっと奪ってしまった。ちょっと、と文句を継ぐ間も無く、じわりと暖かい熱が彼女のつま先の氷を溶かした。
「やだ……あったかい」
「おー、そうか?」
 嘆息をつくかよ子に気を良くしたらしい彼はそのままつま先、引いてはふくらはぎまでをマッサージの要領で掌で覆っていった。日中に仕事で歩き回ったせいかずいぶん足が張っていたことに今更気づかされる。筋肉をほぐされ、凝り固まっていた乳酸を分散されると、脳まで柔らかく溶け始めるような不思議な心地がする。やけに彼の掌が暖かい気がするのは彼が太陽の戦士と言われる所以なのかもしれない(言ったらたぶん、関係ねーよとげんなりされる


13th.Mar.2010

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