シンタローとグンマ

なんか知らんけどグンマの涙がだらだら流れて止まらなくなったけど害はないので放置してる話


 書きものをしている従兄弟の顔からはらはらと落ち続けている雫を、シンタローはぼんやりと眺めていた。幼い頃から飽きるほど見てきた泣き顔だと思っていたのに、なぜか別人の顔のように思えた。
 シンタローの視線に気がついたグンマが手を止めて口を開いた。その頬には今も静かに涙が滑り落ちている。
「なに、シンちゃん?」
 瞳から溢れ出るそれをもはや単なる水としか思っていないのか、拭うこともせずにグンマはシンタローに顔を向けた。シンタローを見つめた瞳は、ちぐはぐに静かな青色を湛えていた。
「別に。なんでもねーけど」
 あ、そう。と再び泣き顔が書きものに向かうと、シンタローも読みさしだった新聞に戻る。隣国の経済がどうとかいう記事を読みながら、はたと思い当たった。泣き方が、違うんだよな。昔からグンマというやつは泣き虫で、ことあるごとに泣いていたものだし、齢三十の見えてきた今でも残念ながらそれはあまり変わっていないのだ。だから、こんな風に静かに涙を流している様子はあまりにちぐはぐだったのだ。そう勝手に納得すると、シンタローは新聞を少し下げて再び従兄弟を見た。つい先ほどまでと景色は変わっていないようだった。
「つうかよ、お前。始末書くらいさっさと終わんねえわけ?」
「え・・・」
 きまり悪げに逸らされた目からもまだちぐはぐな涙が流れている。幾つか雫のこぼされた書きものを覗き込み、シンタローは拳を握った。涙の止まらない可哀想な従兄弟は、線の滲んだ幼稚なイラストをわざわざ総帥の執務室でこれまで描いていたわけだ。
「あ、あのさシンちゃん。これはね、新しいアイデアであってさ」
「へえ〜」


グンマの涙はしばらくしたら普通に止まった




1st.May.2016

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