変人48面相とサルガタナス

 ご主人様ほどオレの使い手となるに相応しい人間は、この世に二人と居ないだろう。サルガタナスは、彼についてそのように思っていた。

 うん今日も夜風が気持ちいい、と耳に心地よい声が語るのを聞きながら、サルガタナスは喋るべき言葉も見つからずにその男を見上げた。
「どうしたの、サルガタナス」
 相変わらずよく通るその声に対し、ふご、とサルガタナスは口にくわえた異物を鳴らして答える。
「何でもないですぴょん」
「ん〜職能が隠匿だからって、私にまで隠し事かい?」
 主人の口調は飽くまでも柔らかであったが、サルガタナスはすぐに自分の浅はかな行いを後悔した。続く決まり文句は大抵「悪い子にはお仕置き」であるのだ。
「ご、ごめんなさいですぴょん」
「あははっ嘘が下手だねえ、サルガタナスは。隠匿の悪魔なのに」
 愉しげな主人に、悪魔はほっと胸を撫で下ろす。悪魔使いにも、色々な者が居る。人間界に現れた悪魔を不死身だからと簡単にグリモアを振り下ろせる者も居れば、まるで悪魔を友かのように接する者も居る。彼は、どちらかと言えば後者に近しいようだった。そもそも、彼の性質が暴力を好むようには思えないとサルガタナスは感じていた。その分、変態行為に及ぶまでの躊躇はほんの少したりとも無いようであるが。
「ウソはやめなさい。せめて私にはね」
「・・・・・・ご主人様」
 ふわりと頭に置かれた手の感触は、彼の昔の姿そのものを思わせた。過去の彼ならば、ついぞサルガタナスと契約することもなかっただろう。
「あっ、なんか今ちょっとアレだね!私キマっちゃってたかな?全裸なのにね!」
 やはり主人にかけるべき言葉を見つけられずに、サルガタナスは、ふご、と異物を鳴らして応えた。



7th.Jun.2013

↑back next↓



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -