ナルマヨ

愛する/


 どこが好き?とその無邪気な声に楽しげに尋ねられ、成歩堂は言葉に詰まる。早いところ答えなければ彼女の機嫌が悪くなっていくのも目に見えているが、こういう尋問はどうも苦手だ。咄嗟にそんなもの思いつくわけがない。ええと、と口ごもる間に、素肌を晒していた彼女の背中に見えたものが自然と口をついて出ていた。

 け、けんこうこつ? 
 成歩堂の言葉をリピートして、それからぐるりと首を回して彼女は彼の顔を眺めた。
「なるほどくん、なかなかに変態ちっくだね」
 あっけらかんと笑う彼女は、色気とかそういった類の物とはまったくもって縁遠いもののようで、何かこれは間違えたかなと幾度となく巡った疑念がまた頭を掠めていく。
「・・・うるさいな」
 これもまた何度口にしたかもわからない文句を載せて、そのままに報復とばかりに件の肩甲骨に唇を寄せる。こうしたときに、ひ、と小さく聞こえる声も込みで好きだった。彼女の細い背中に浮き上がった羽根のような肩甲骨が夢みたいにきれいだと思う。きっとこの羽根を見た人は幸福になるに違いないし、もう自分以外にこの羽根を渡すつもりも毛頭ない。つるりとその羽根を指先で撫で、背後から肩を抱き寄せてみるとかすかに石けんの匂いがした。


10th.Apr.2013

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