鉄サニ

 まさか、こんな男と当たり前のように隣を歩く日が来るとも思っていなかった。自ら美を追求しているとあって、確かにその容貌は現実味がないほどに美しいと言ってよかったのかもしれない。初めて会ってからもう暫く経つが、まだときどきその外見には慣れないと思うことがある。なんだか面倒くさそうな奴だなという第一印象は概ね間違ってはいなかったが、言葉とは裏腹に彼が友達思いで、努力も惜しまない男だったことは少し共に過ごしていれば自ずと理解できた。
「てっぺ、これも」
「ん?ああ、はいはい」
 当然のように渡された美しい果実の代金を自分が払って、自前のカバンに詰めていく。ライフの市場に出される食材は、土地柄から健康や美容に良いものが多く、またその彩りも鮮やかなものが多い。どうやら隣を行く男にもその辺りはずいぶんご満足頂けたようで、最初は渋々だった買い出しも今では進んでついてきてくれるようになった。買い出しの多くはトリコの体力を回復させるため精力の付く食材が主なのだが、また一つ新たに卸されたらしい食材を見つけてしまって、つい鉄平も隣に声をやってしまった。
「なあ、サニーこれもお前好きなんじゃないか?」
「おっ!わかってんじゃん、てっぺ」
 まあねえ、と答えて店主にその宝石のように綺麗な果物をひと包み頼んだ。そういえば、美食屋四天王のサニーはずいぶんな偏食家だと聞いていたが、慣れればその好みを当てるのは簡単なように思う。わかるよな、これくらい居れば。うん、と包みを受け取って、ふと隣のサニーを見た。好みの食材を食べられるとあって、その表情は目に見えて明るい。彼のそんな顔を見ていたら、なんとなく自分までどうしようもなく口元が緩んだ。
「んだよ?」
「いやあ、あのさ俺たちって最近いい感じじゃね?とか思って」
「ハァ?にそれキモッ」
 思ったことをそのまま口にしてみると、やはりすげなくされてしまった。しかし、それでも隣を行く彼が楽しそうであるのには変わりないなのだから、口は災いをもたらすとも限らない。そうかあ?とやはり緩んだままの口元を隠しもさずに鉄平もまた、彼の隣を歩く。






3rd.Oct.2012

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