■ 切実に、嘘
“あなたなんか、大嫌い”
私は、彼にそう言いました。
彼は酷く辛そうな顔をしました。
私も本当はとても悲しかったのだけれど、私は義務であるかのように言葉を続けました。
“私はあなたが大嫌いよ”
“この世界で唯一嫌いなのはあなただけだわ”
本当は、部屋の隅のクモも大嫌いなのだけど。
本当は、ママの怒った顔も大嫌いなのだけど。
“とにもかくにも、私はあなたが大嫌いなの”
(だって、あなたったら私がこんなに話しかけて居るのに、一言も返してくれやしないんですもの!)
幼い少女は腕を組んで言いました。
「ねぇ!なんとか言ったらどう?」
椅子にちょこんと座る、彼。
黒いつぶらな瞳に赤いリボン。そしてもふもふとした柔らかな、テディベアに向かって。
少女の世界は嘘で創られる
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