■ 絵本
手を引かれて、一歩。
人がまばらになる夕方。
学校が、どんな所なのか気になって、少し足を延ばして学院まで行ってみた。
でも、そこは沢山人が居て。
あたしとは、全然違う服を着て、全然違う雰囲気を纏った人ばかりで…。少し、怖い。
兄様のお店なら、慣れてしまったけど。こういう、どこか清潔な匂いは、少し不安になる。
ここに、こんなきれいな場所に、あたしが入って良いの…?
袖の中に隠した物が、急に重たく感じられる。
中に入らないんですか?
そんな時に後ろから、聞いた事のある声。気配には気が付けなくて。吃驚。
振り向けば、フラウラさんが。
人が沢山で怖い、と。そう言えば、握られた手。どきりとした。握られた手の袖にも、隠されたソレ。優しい手には不釣り合いな……。
だけど、その優しさに甘えてそのまま手を引かれて学院の中へ入る。
ふわふわしたような、不思議な感覚。
別の世界に居るような…。
図書館の中に入ってからも、ふわふわは変わらないまま。
ただ、本の多さに圧倒された。
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