■ あくび、

重なる、あくび。
旅人さんが横に居た。

夜とお昼との間は、広場の人も少なくなっていて。少し寂しい、そんな空気。

お仕事まえの、ちょっとしたお散歩。あたしは広場のベンチに座って、でも起きたばかりで、眠たくて…。

袖口で口元を隠して、あくび。
隣からももう一つ、あくび。

きょろきょろと見回せば、ふわりとした雰囲気の、可愛らしい人が。

優しく声を掛けてきてくれて。
魔法のお話をしたの。
手品と魔法は、何が違うのかしら。あたしにはよく解らなかったけど。一生懸命考えて教えてくれた、良い人。謝謝。

名前は、ネージュさん。
旅をしているのだと教えてくれたわ。

少しして、宿屋のおかみさんが待っているから、とネージュさんが席を立つ。次に会えたら、旅のお話を聞きたい。私が行ったことのない、いろんな場所のお話。兄様の酒場では、聞かないようなきれいな、そんな…。


…あたしを、忘れないでいてくれるかしら。
再見。願いを込めて、呟いた。




[ prev / next ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -