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「千鶴、いるか?」


部屋で山崎さんから借りた本を読んでいると、なまえさんの声が聞こえた。
どうしよう、なまえさんが私の部屋を訪れるなんてあまりないことだから心臓がドキドキする。

「は、はい!います!入ってください。」


思わず大きい声を出してしまった。
なまえさんの前では女の子(今は男装中だけど)らしくしたいのにな……私の馬鹿。

失礼する、と言ってからなまえさんは扉を開いた。


でも、そこにはもう一人女性がいた。
私よりも女の子らしい体つきをしていて、異国の人みたいな格好をした子。


足なんていっぱい出して、腕も出して。
失礼かもしれないけどまるで遊女のようだった。

誰ですか、その子。
なまえさんの恋人ですか?


「千鶴、紹介する。いろいろあって俺が世話をすることになった廻谷心だ。」


「いろいろあってってそこが重要なんじゃないですか!ちゃんと説明してくださいよ!」


私よりずっと仲良さげに会話をする彼女。
そんなそんな、なんでそんな軽々しくなまえさんに触るんですか、どうしてそれを何も言わずになまえさんは素直に受け止めているんですか。



「心、煩い。一応言っておくが実をいうと千鶴は女でな、分け合って男のふりをしている。
何があっても他の奴に言うな。言っていいやつかは俺が後々説明するから。
それでだな千鶴、こいつの服装はさすがに目立つからお前の着物があったら貸してほしいんだ。」

本当は嫌だって言いたい、けれどなまえさんに迷惑をかけたくない、何より嫌われたくない。

私はもちろんですと作り笑いを浮かべて答えた。



いっそ毒針でも刺して渡してやろうかと思った私がすごく怖い。



男は外、女は中


何のことだかわかります?
男の人は殴り合い、女の人は悪口の言い合い。
体に痕を残すのと、心に傷を残すの、どっちがいいと思いますか?






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