39


真夜中に肌寒さと人の気配を感じ目が覚めた。
誰かが俺の前にいる、まだ眠気の残る目はぼんやりとしているがゆっくりと顔を上げれば会いたくない奴がいた。


風間千景、俺の一番会いたくなかった男。


思わず眉間に皺が寄り、目の前が揺らいだ。



「ほぅ…どうやら己に何が起こるか理解しているようだな…」


あの腹立たしいゆっくりとした、だけど心の奥底にまで届くその声が俺を見透かしているようで苦手だった。
こいつは俺が何をしようとしていたかを知っている、誰も殺してくれず自分でも死ねない今餓死以外の道は俺に残されていない。
あと数日我慢すればよかったのに、あと少しで終わりが見えていたのに…。



「悪いが、俺はお前を殺さん…そして勝手に死なせるつもりも毛頭ない。」

やめてくれ、俺を死なせてくれ。

なんとか留まっていた涙がとうとう溢れてしまった。
俺はまたこいつの前で泣いてしまった。



「閻魔だろうとお前は渡さない」



赤黒いその瞳に金色が差し込んだ気がした。
その言葉にいつもならこの気障野郎と返す所だがあの時俺に口付けした時と同じ瞳をしているからか、万全な状態ではないからか。


昔の俺を知らないこいつに、新選組での俺を、近藤勇の弟としての俺を知らないこいつが何者でもない弱くみすぼらしい俺を必要としてくれることに喜びを感じてしまった。


風間は俺の口布を外し、あの日のような無理やりの口付けではなく優しく唇を落とした。



二度目の口付けは渇いていた


からからと渇いていた唇にあいつの温度が移って離れれば物足りないと思ってしまう。
嗚呼、まるで俺は親から餌をねだる雛鳥のようだ。



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