「相変わらず、的確な指示で関心するぜ。」 [ 10/20 ]


『ロゼは大きくなったら何になりたい?』

『父様みたいな騎士様になりたい!そして悪い人をやっつける!!』

『ははは、それは頼もしいな。でも、悪い人ってどんな人かな?』

『うんとね、人を傷つけたり、物を盗んだり、とにかく意地悪する人!』

『でも、それが大切な人を守るためだったりしたら?生きてゆくために食べ物を盗んでしまった人は?この人は悪い人かな?』

『・・・・父様難しい・・。』

『ははは、ごめんよ。父様はね、いつもロゼの見方だよ。ロゼが考え抜いて決めた事ならそれは正義にもなるし、悪にもなるんだ。よく考えて決めるんだよ。』

『はい!父様!!』

私がいくつの時だろう。とても幼き頃のように思える。
父様はとても大きくて、強くて、優しくて、皆に好かれていた・・・・と幼き記憶として残っている。父様に逢いたい・・。
逢いたいな・・・・・・・。





(眩しい・・・)

窓から差し込む光で目が覚める。
上半身を軽く上げ、周りを見渡す。

(ここ・・・は?)

自分が寝ていたベッドの横にある、サイドテーブルが目に付く。
そこには、飲みほしたワインのビンが、何本も乱雑に置かれていた。

(あぁ・・・そうか。ココはヴィンスの部屋ね。)

偶然再会した、ヴィンセントの宿泊先に押し入り、部屋にあったワインを飲みに飲みまっくた事を思い出す。

(チョット飲みすぎた・・・かも・・・・・微妙に頭が痛い・・・・・。)

状況が確認でき、安心感から、再度眠気が襲ってくる。

(もう一眠り・・・。)

枕に頭を沈め、意識が消えかけた時。

「いい加減、起きたほうがいいですよ。」

軽く肩を揺すられ、起こされる。

「い・・今何時?」

「7時半を少し回ったとこです。」

上体をゆっくり起こし、私を起こした犯人を見上げる。
騎士団指定の軽装を身に着けたヴィンセントが、軽く睨むように私を見下ろしていた。

「まったく。ホントに姫様は見た目に似合わず、酒癖が悪い。体調は如何ですか?」

「少し頭が痛いわ。」

「じゃ、これ飲んで下さい。後、新しい服を用意させましたから、シャワー浴びて着替えて下さいね。古い服はミレイナに取りに来させますから、脱衣所に置いといて下さ
い。」

水の入ったコップと、二日酔い用の薬が入った紙袋を素直に受け取り、それを飲み干す。
ミレイナはヴィンセントがまとめる小隊の副官を勤める、小柄の可愛らしい少女だ。
副官はどうしても女がいい、と言うヴィンセントの強い要望で、他の隊に配属されていたところを引き抜いてきた。
ある意味不運な少女である。

「何から、何までありがとう・・・。」

「じゃ、俺行きますね。姫様も早く彼らと合流した方がいいですよ。」

「早いのね。」

先程ヴィンセントは、今の時刻が、朝の7時半だと言っていた。騎士は朝が早いといえど、集合には少し早いように感じた。

「フレン隊は真面目が売りですから。」

「ふふ、大変そうね。」

「いいえ、こうして偶然にも姫様と再会できて嬉しいですよ。本当はヘリオードに行きたかったんです。姫様はダングレストに向かわれましたから会えるとしたら、そっちでしょ?でもエリーとのくじ引きに負けまして。これは運命ですかね。」

「そうね。私も会えて良かったわ。」

「俺達は明日には帝都に戻ります。支援といっても何も仕事なかったんですが・・・・取り合えず、誰かさんが俺達を帝都に置いときたくなかったんですかね?」

「そうね。私たちの動きを向こうも探っているのかも・・・。」

「お気を付けを。」

「そっちこそ。」

私達は、互いの健闘を祈り、別れた。
ヴィンセントが部屋を出て行った後、すぐに身支度を整え、ユーリ達が宿泊している宿屋へ向かった。






「あっ!ロゼだ!!」

宿屋の前まで来ると、丁度中から出てきたカロルと鉢合わせた。

「連絡も無しに、勝手な行動してごめんなさい。少し飲み過ぎて、昨日は彼の部屋に泊まったの。」

その後、続々と中から出て来た仲間達に、昨晩の話をする。

「おっさんショック!!ロゼちゃんは純真だと思ってたのに、朝帰りなんてっ!!!」

大げさなリアクションをとるレイヴン。

「ち、違うわよ!彼とはそんな関係じゃ・・・」

「あら、どんな関係なのかしら?」

慌てて訂正を入れると、楽しそうに微笑みながらジュディスが質問をしてきた。

「ど・・・どんなって。」

「恋人・・・ですか?」

「只の幼馴染」そう答えようとしたら、横からエステルが横槍を入れてきた。

「ち、違うわよっ!」

「どーだっていいだろ。幼馴染なんだろ、それより早く出発しようぜ。」

エステルの言葉に否定し、訂正をしようと思ったら、離れた位置からユーリが声をかけてきた。

「そうだね、早く出発しよう!」

ユーリの言葉に、カロルが同意し一同は砂漠に向けて街を出ることにした。

「ふふ、一番気になっているのは誰かしら。」

「何だよジュディー。」

「何でもないわ。」

そんなユーリとジュディスの会話を他所に、私は今後、これ以上行動をあやしまれないよう自重する事を心に決めた。





港街に出ると、二人の男の喧嘩に遭遇した。
刃物をチラつかせ、緊迫した雰囲気にどうしたものかと考えていると、気弱そうな一人の男がその二人に近づき、喧嘩の仲裁に入った。
が、余計二人の気を高ぶらせてしまい、収拾がつかなくなってしまった。

「おいおい、ココは街中だそ。喧嘩したければ、丁度闘技場があるんだ、そこで喧嘩なり、決闘なりすればいいんじゃねーか。」

そこに、騒動を沈めようと、ユーリが二人に声をかける。
怒気が込められたユーリの言葉は、予想以上に威力を発揮し、二人はそそくさと姿を消した。

「あ、ありがとうございます。」

喧嘩の仲裁に入ったつもりが、結果としてユーリに助けられる形となった気弱な男が礼を述べる。

「あれ、もしかしてあなたは『遺構の門(ルーインズゲート)の首領、ラーギィさん?」

確認するように、カロルが気弱な男に尋ねる。

「そうです。私はギルド遺構の門のラーギィです。」

「遺構の門?」

二人の会話に、エステルが質問をする。

「遺構の門は、アスピオの帝国魔導器研究所と共同で魔導器の発掘を専門に行う、発掘
中心のギルドよ。」

エステルの質問に、リタが答える。
アスピオの研究員であったリタは、彼らと関係が深いのかもしれない。

「あ、あの。助けて頂いてあれなんですが、皆さんに・・・・そのお願いしたい事がありまして、お話を聞いて頂けませんでしょうか?」

下がりに下がっていた眉を、さらに下げ、ラーギィは様子を伺いながら、依頼をしてきた。
それは、このノードポリカを治める、戦士の殿堂を乗っ取ろうとする男がいるので、闘技場に出場してやっつけて欲しい・・・・と言う内容であった。





状況がいまいち飲み込めぬまま、私達は闘技場へと戻って来た。
五大ギルドの危機とあってはほってはおけない、と言うカロルの言葉に皆が同意したからだ。
戦士の殿堂を乗っ取ろうとする問題の男は、闘技場のチャンピオンを倒し、無敗のチャンピオンとして、現在君臨していると言う。
このチャンピオンを倒す為に、ユーリが闘技大会に出場する事になった。

(あれ、確かチャンピオンって・・・・。)

昨日のヴィンセンから聞いた話を思い出す。
フレンと言う騎士が現チャンピオンだと言っていた。

(ユーリに伝えるべきかしら・・・。)

迷った結果、ユーリには現チャンピオンは騎士の人間だ、と伝えた。
少し困惑した表情をみせたが、ユーリは相手は誰でも関係ない、と意気揚々と登録カウンターへと進んで行った。
ユーリを見送った私達は、彼の戦いを応援する為、観覧席へと移動した。





「フレン!?」

ユーリは無敵の強さを発揮し、順調に勝ち進み決勝戦へと駒を進めた。
そして現れた、無敗のチャンピオンを見て、エステルが驚きの声を上げる。

「エステルの知合い?」

他の仲間たちの様子を見ても、フレンと言う騎士を皆知っているようだった。

「はい。彼は帝国騎士で、ユーリの幼馴染なんです。」

そう言えば、下町出身だと聞いたような・・・。
思わぬ再会に、ユーリも少し困惑しているようだった。

「これってどう言うことかしら。」

リタが眉をひそめ、独り言のように呟く。

「何故、騎士が闘技大会に参加してるの?確か、ラーギィは戦士の殿堂を乗っ取ろうとしてるって言っていたわよね。」

「はめられた・・・・のかもよ。俺達。」

「まさか、人当たりがいいので有名なラーギィさんが、なんで?」

リタの疑問にレイヴンがラーギィに、騙されたのではないかと言う。
だが、カロルは争い事を好まず、穏やかで人を騙すような人ではない、とラーギィをかばった。

(どう言う事?)

ラーギィの話をまとめると、帝国騎士であるフレンが闘技場のチャンピオンを倒し、戦士の殿堂を乗っ取ろうとしている、と言う事になる。
もっと要略すると、帝国がギルド組織に介入している、と言う事だ。

(これも全てアレクセイの企みなの?)

と、そこに大きな爆発音と供に、一人の男が二人の戦いの間に入って来た。

「ユーリ、ユーリ!!俺と殺しあおうぜっ!!!」

全体にピンクの髪色に、前髪だけ金髪という奇抜な髪型のその男は、ユーリの名前を連発しながら右手に持った剣を振り回している。
一目見ただけで、彼の感覚が普通でない事がわかる。

「うわ!またあの男だよ!生きてたんだ!?」

「ユーリが危ないです!!行きましょう!」

どうやら、エステル、リタ、カロルは奇抜な彼と面識があるらしい。
観覧席の柵を飛び越えて、私達はユーリの元へ駆け寄る。

「ザギ!いいかげんにしろよ!!お前にかまっている暇はねーんだよ!!」

奇抜な男、ザギの攻撃を交わしながらユーリが怒気を含んだ言葉で牽制する。

「ククク、冷たい事を言うなよ。お前と殺しあう為に、俺は力をつけてきたんだからよ!」

ザギが左腕を空へと掲げる。
その腕には、あやしげな光を放つ魔導器が付けられていた。
そして、その魔導器から光が放たれ、観覧席へと向かって行った。
人々はそれに驚き、我先にと逃げ惑う。
光は壁にぶつかると、爆発し、壁に大きな穴をあけた。

「まずい、観客を非難させないと!」

空色の甲冑を身にまとった、金髪の青年、フレンは自分の隊を呼び、観客を安全な所へ非難させるよう指示を出した。

(確かにとっさの判断力はあるみたいだから、優秀なのね。彼。)

フレンの様子を見て、観客への安全は確保されたと判断した私は、ユーリの元にかけより彼の判断を仰ぐ事にした。

「取り合えず、コイツをどうにかしないとな。」

「気を付けて!奴の腕に巻かれてる魔導器、魔術を吸収するわよ!!」

リタの言葉に皆が眉をひそめる。

「そうなると、物理攻撃しか通じないって事!?」

「ですが、あの魔導器からの連続攻撃は防ぎようがありません!!」

レイヴンとエステルの言葉に、私はある作戦を閃く。

「魔術を吸収すると言っても、無限では無いはずよ。きっと限界があるはず・・・・。試してみる価値はあるかもしれない!皆聞いて、リタとレイヴンで魔術による集中攻撃を仕掛けて、そしてあの魔導器に魔術を吸収させて!」

「どう言う事だ?」

「吸収できる容量を超えれば、あの魔導器を壊せるかもしれない!そうすれば戦いが楽になるはずよ。」

「なるほど。で、俺達は?」

「リタとレイヴンの援護をしつつ、破壊次第攻撃に転じる!そしたら、リタとレイヴン
が私達の援護を!エステルとカロルは後方支援を!」

「相変わらず、的確な指示で関心するぜ。」

「お褒め頂光栄ですわ。」

苦戦したものの、私の読みは当り、ザギの魔導器は一定の魔術を吸収した後に壊れた。
このタイミングを逃さず、私がザギの懐に入り隙を作る。
そこへ、ユーリが止めの一撃を決め、ザギの動きを止める事に成功した。

「ククク、ユーリ・・・・やはりお前は強いな。だがまだだ・・まだ俺は戦える・・・ハハハ、ハーハハ!!」

ふらつく足元を奮い立たせ、ザギは高らかに笑いだす。

「な、何なのこの男。」

私は異様な光景に、恐怖を感じた。

「平たく言えば、ユーリのストーカーよ。」

リタは呆れたように呟く。

「へ〜・・・。」

「そんな目で俺を見るな!俺は被害者だっ!!」

つい、ユーリに冷たい目線を送ってしまった私。

「ク・・・あぁああああ!」

急に、魔導器の付いた左腕を押さえて、苦しみだしたザギ。

「何!?どうしたの?」

「魔導器が暴走しかけているのかも!!」

「何だって!?」

カロル、リタ、レイヴンがそれぞれ話終わると同時に、ザギの魔導器が強く光り、いくつもの放射線状の光が放たれた。
それは壁や、床、そして見世物用の魔物達を閉じ込めていた結界魔導器にあたり、次々と破壊してゆく。

「やばいよ!魔物が街へ逃げて行くよ!!」

逃げ出す魔物を指差しながら、カロルが皆に声をかける。

「皆!なんとしても魔物を街に出すな!!」

そこに、大柄な男が何人もの男達を引き連れて、闘技場の中に入って来た。

「ナッツさん達です!」

騎士達と供に、観客の避難を先導していた戦士の殿堂のメンバーが戻って来たようだ。
辺りは、多くの魔物達が徘徊する事でできる土煙によって、視界が悪くなっていた。

「きゃっ!」

「チョっ待ちなさいよ!」

エステルの悲鳴の後に、リタの怒鳴り声が聞こえた。

「どうしたの?」

二人の側に駆け寄る。

「ラーギィよ!彼がエステルから『紅の小箱』を盗んで行ったの!!」

リタが逃げて行ったラーギィの後ろ姿を追って、走って行ってしまった。

「ラピード!」

すぐに、ユーリがラピードに合図をおくり、リタの後ろをついて行かせる。

「私達も追いかけましょう!」

闘技場を出て、街の出口に向かうとリタが一人、息を整えながら私達を待っていた。

「ラピードは?」

「ラーギィを追って街の外に出て行ったわ。」

「よし、俺達も追うぞ。」

こうして、私達は色々な事件に巻き込まれながら、砂漠へと向かった。



第11話につづく・・・・



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