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「女に振られて傷心のところ悪いな、真島 誠」
「別に振られてなんかねえよ」

そして暗闇の中声をかけられた。計算通り。星一つない空を仰いだ。

「来ると思ったぜ、磯貝」
「キングが憎い、京一が憎い。だがな全てはお前さえいなければおれは上手くやれたんだ、マコト」

そうだ、こいつがまともな判断をしてくれれば憎しみの矛先はおれに向いてくると思った。ここまでは読み通り。

「そうだよな、お前はタカシすら出し抜いていたんだもんな。おれさえいなかったら今頃池袋はお前とあのジジイのものだ」

磯貝はポケットに手を突っ込んだまま少しずつ近づいてくる。おれはまだ立ち上がらない。慌てるな。あいつは足を壊している。

「そうだ、お前さえいなければ。今からでも遅くはない。お前を消して、キングを消して、京一を街から追い出せばグレーゾーンはおれのものになる」
「ネロもびっくりの暴君だな」

そして間合いがだいぶ詰められた頃、やつはポケットからぎらりと輝くナイフを取り出した。そしてやつは叫んで突進してくる。

「お喋りもおしまいだ!真島 誠!」
「終わるのはお前だよ、磯貝!」

その時だった。横からいつも通りの赤色のパーカーを着たそいつが飛び出してきて磯貝に飛びかかった。驚いたのか取り落としたナイフはおれが回収する。驚いたように磯貝が叫んだ。

「京一!お前ら謀ったな!」
「毎回爪が甘いな、磯貝。そんなんじゃこの街を支配出来ない」

ギラギラと光るナイフを折りたたんで尻ポケットにしまった。京一は磯貝を地面にねじ伏せながら冷たい目で奴を見下ろしている。

「さて。どうしようか、京一。こいつの身柄の受け渡し先はふたつある。ひとつは警察。次は檻から出てこれないだろうな。もうひとつはおれの友人。羽沢組の渉外担当でこいつが縄張りを荒らしたせいで歓楽街の売上が落ちたと酷くご立腹だ」
「そうか、警察の檻の中に戻すのは可哀想だな。マコトの友人ならきっと可愛がってくれるかな」
「そうだな、連絡してみようか」
「や、やめろ!警察に・・・!」

磯貝が喚いたが京一はその顔を地面に押し付けた。俺はスマートフォンを出してサルを呼び出した。

「約束通り、戦争を終結出来そうだ。縄張りを荒らしていたカラスの頭を見つけたんだが、そっちで落とし前つけさせてくれないかな。警察じゃ反省できなかったらしい」
「ああ。わかったよ、マコト。珍しいな、そういう決断は」
「今回ばかりはな」

そう言うとサルはすぐに車をまわすと言ってここの場所をきくとすぐに電話は切れた。

「助かったよ、京一。ありがとう」
「いいや、呼んでくれてありがとう。心置き無く元の世界に戻れるよ」

少し寂しい京一の笑顔。それからおれと京一は黙ったまま、サルの車を待った。


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