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走りながらスマホを抜いて、タカシにコールを入れる。引き継ぎが出る、罪のないそいつにさっさとタカシに代われと怒鳴ってしまった。
どこか人気のない場所に磯貝を誘導すべきだ。だがどうやって、しかも現状それどころではない。火元の消火より目の前の小さな火の粉を振り払うのに精一杯。
急転直下の展開に頭がついていかず、電話の奥で引継ぎからタカシに代わる気配がするや否やおれは余裕なく叫んだ。

「カラスの頭がわかった!磯貝だ、磯貝 繁幸!」
「あいつか、ムショの中じゃないのか」
「出てきたみたいだクソ、まさか戻ってくるとは」

京一がやっぱり殺しておけばよかったんだと吼えた。
そして高く飛ぶ、行先で赤が黒に襲われていたのだ。なにが統率のないカラスに司令を与えたのかわからなかったがやはりこれが現実だ。磯貝のはったりではなかった。

「うちのメンバーに手を出すな!」

京一の力強いパンチがフードで顔を隠した黒ずくめの頬に直撃した。
ストリートを離れていても、京一は圧倒的に強かった。3人のカラスをすぐに撃退する。逃げ出す奴らを追う素振りを一瞬だけみせたが、突如襲われたのだろう。うずくまったままの赤いガキに走り寄って行った。

「マコト、どうした」

タカシが電話の奥で珍しく焦ったように言う。おれはちくしょうと叫んでしまった。やってしまった、止められなかった。同時多発的にこの池袋の街で喧嘩が起こっている、目の前のこれを止めたところで何色かの血は流れ憎しみな連鎖する。

「始まってしまった。各チームのヘッドを集めろ、早急に。場所はメトロポリタンホテルでいいよな、おれもすぐ行く」

タカシが横にいるだろうアサヒに何か言ったのが聞こえた。電話を切る。ちくしょう。おれは真横にあるビルの壁を思いきり殴ることしか出来なかった。


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