「レディーっ」

先日の大雨で壊れてしまった雨樋を直していると下から名前を呼ばれた。声の方へ振り向けばスニフが手を振っていた。

「おはよう、どうしたの」

あらかた直った雨樋をちらりと確認し、そのままはしごを降りながら彼に挨拶をした。すると彼はにこにこしながら挨拶を返してくれる。

「おはよう、いまからムーミンのところで朝ごはんを食べるんだ。レディも行かない?昨日みんなで木の実をたくさん摘んだからきっとムーミンママがたくさんジャムやケーキを作ってくれてるよ」
「やったあ、わたしコケモモだいすき」
「もちろんたくさん詰んだよ、僕もだいすきなんだ」

ここは平和なムーミン谷なのだから家に施錠も倒したはしごをしまい込んでおく必要もない。朝ごはんを後回しにして外を見ていて正解だった。おいしい料理に向かってスニフに続いてムーミン屋敷に向かって駆け出した。



木苺のジュース、コケモモのタルト、パンケーキに生クリームとベリーを添えて。お口直しにはソーセージを。広い食卓の上には目にも楽しいたくさんの料理が並んでいて思わず嬉しさに目を細めた。

「あらあら、レディも来たのね。いらっしゃい」

また新たな料理を手にキッチンから現れたママに挨拶をしてなんとなく定位置になっている席についた。

「おはよう、みんな。ママ、スナフキンも連れてきたよ」
「あらあらいらっしゃい」

そこへスナフキンを連れたムーミンも帰ってきてみんなに挨拶をした。

「さあさあみんな席について、さっそく食べようじゃないか」

パパがそう音頭をとれば、ムーミンとスナフキンが席に着く前にスニフとミイがさっそく料理に手を伸ばした。

「ちょっとスニフ!がっつかないの!」
「なにさ!ミイだって」
「まあまあまだたくさんありますから」

そしてお決まりの通り2人が口喧嘩をはじめるのをよそに私はだいすきなコケモモのタルトに手を伸ばした。

「レディは昨日どこにいたの?木の実を摘みに行く前に家に行ったんだけどいなかったから」

するとフローレンが木苺のジュースを手にそう尋ねてきた。昨日は今日と同じくとてもいい天気で森へ行くにはとてもよかった。みんなと木苺を摘みに行ったらよかったなと若干の後悔を胸に答える。

「海に魚を捕りに行っていたの。そろそろ街から行商がくるだろうから」
「なにか欲しいものがあるの?」
「前回綺麗な反物をいくつかお願いしたの、新しいお洋服が縫いたくて」

そう言って少し古くなったワンピースの裾を握った。前に住んでいたところで作った、ムーミン谷に初めて足を踏み入れた時に来ていたワンピースだ。いいかげんくたびれてきていた。

「いいなあ、どんなデザインにするか決まった?」
「まだ決めかねているのよ」
「だったらあとでわたしの本を貸してあげる、きっといいデザインが見つかるでしょう」
「ありがとう、ママ!」

いつもムーミン一家にはお世話になってばかりだった。あの日、初めてムーミン谷に訪れた日にそういう事情ならここに泊まればいいと署長さんが案内してくれた場所がムーミン屋敷だった。3人は見ず知らずの私を快く受け入れてくれ、ここに家を建てると決めた時も完成するまでいてもいいと言ってくれたうえにムーミン一家が家を建てるのを手伝ってくれた。
おかげで思っていたよりだいぶ立派な家があっという間に出来上がってしまった。
いくら感謝してもしきれないのにいまでもこうしてごはんをご馳走になってしまっている。

「レディ、今日はもう魚獲らなくていいの?」
「うん、昨日はたくさんとれてもう干物にしてるから」
「じゃあ今日は僕たちと遊ぼう、スナフキンも来るよね?」
「わかった、あとから行くよ」

やった、今日はみんなと遊べる。そのあとは小さな会話を楽しみながら夢中でムーミンママの料理を楽しんだ。

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