お月さまのようにまんまるのおしりを目にして思わず笑ってしまった。春の陽気に釣られてかベッドから垂れた尻尾がゆらゆらとご機嫌に揺れている。
蹴落とされている厚手の毛布を拾い上げながら長い眠りの中にいるムーミンに声をかけた。

「起きて、ムーミン。もう春よ」

窓の外には鮮やかな緑が一面に広がっている。ベッドの足元に簡単に畳んだ毛布を置いて固く閉ざされていた窓を開けてあげた。そして胸いっぱいにいのちの匂いがする風を吸い込む。するとムーミンの鼻がひくりと動いた。
夢の世界から戻ってくるまであと一歩。どうしようか悩んでいると、懐かしい音色と笑い声が聞こえてきた。いまにもステップを踏み出しそうな春の音楽をハーモニカが奏でている。それを長い眠りについていた友人たちの笑い声が彩っていた。
ムーミンの耳もきちんとその音を捉えたみたい。一度ぴくりと動かしたと思うと、とうとうばね仕掛けのおもちゃのように飛び起きた。

「春だ!スナフキンが帰ってきた!」

そして彼はわたしを見つけて目を輝かせる。

「おはようレディ!早く下に行こう!」
「もちろん!ムーミンママがとびきりの朝ごはんを用意してくれているわ!」

その言葉に待ちきれないといった様子でムーミンが部屋の扉を開けた。今日ばかりはバタバタと廊下を走って外に飛び出しても誰も文句を言わない。ムーミンに続いてわたしも駆けだした。
ムーミン屋敷の橋の欄干に腰掛けてハーモニカを吹いている彼のもとに向かう。きっとその近くではフローレンとミイがかわいらしいダンスを踊っていて、スニフも調子っ外れだけど楽しそうな歌を歌っているはずなのだ。これ以上ない最高のはじまりだった。
そのことに胸を高鳴らしながら、わたしは階段の最後の3段を一気に飛び降りた。

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