「疲れた、お腹空いた」
「大丈夫よ、スニフ。あと少しだから」

何があと少しなのかわからないけど。スニフを適当に励ました。ムーミンとミイはとっくに励ますのを諦めている。
弱音を吐くスニフにもう少し歩くぞとムーミンたちが言った。
そこでスニフが突然立ち止まり天文台!と叫んだ。まさか。
スニフの視線を皆で追うとあかりのついたテントが見えた。ミイが何言ってるの、あれはテントとスニフを諌める。そして行ってみましょうと彼女が言葉を続けた。
近づくと微かにハーモニカの音色。怖い人だったらどうしよう。ポケットの中のナイフを握り、怯えを知らないムーミンのすぐ後ろに立った。

「こんばんは」

彼が声をかけるとハーモニカの音色が止み、テントの中から優しそうな青年が顔を覗かせた。

「やあ、旅行者のようだね。君たち、コーヒーを持ってるかい」

悪い人ではなさそうだ。彼はスナフキンと名乗った。わたし達も自己紹介をしながらコーヒーを少し分けてあげると彼は焚き火を囲うようにわたし達に促した。
その通りにわたし達は座ると彼はこの世の終わり、彗星について知っていることをいろいろと話してくれた。

「君はじゃこうねずみさんより詳しいことを知ってるね、どうして?」
「僕はあちこち歩いているからいろいろ話を聞くし、自分で本も読む」

そして彼は話の終わりに、ミイ、ムーミン、スニフの目を見ると最後に私を見た。

「君はずっとずっと東の方から来たね」
「そうよ、どうしてわかったの?」

確かにわたしの出身はムーミン谷ではなくここからずっとずっと東の方にある島だ。それにしても出身を当てられたのは初めてだったので驚いた。

「言ったろ、僕はあちこち旅していろいろ見聞きしてるんだ」

ムーミンと顔を見合わせた。不思議なひと。
彼のテントにみんなで一泊して、翌日スナフキンも一緒に天文台へ向かうことになった。

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