真っ黒な雨が降った。見たことのない天変地異に身の毛もよだつ。
黒い雨で汚れた外壁を洗っていると、この世の終わりだ、滅びると叫びながら歩くこの辺りではあまり見かけたことのないねずみのおじさんに遭遇した。恐ろしい。その日の夜、一人でいることに耐えかねてわたしはムーミン屋敷へ逃げ出した。



「それはきっとじゃこうねずみね。ムーミンたちを怖がらせるものだから困っているの」

そのねずみの話をすると、ムーミンママがそう言いながらほっと落ち着く味の鍋ココアをマグカップによそって出してくれた。
ムーミンパパは新聞を置いて立ち上がる。

「ともかく、天文台に行かないことには何もわからんよ。明日ムーミンたちが行くが君もどうかね、レディ」
「ムーミンが行くなら行きます」
「それじゃあレディのお弁当も用意しておかなくちゃね。パパ、鞄を貸してあげて」

そんな話し合いの後、今日はムーミン屋敷に寝かしてもらえることになった。
パパとママにおやすみを言って、二段ベッドのある部屋に行くと1段目にいるスニフと2段目にいるミイの寝息が微かにきこえた。スニフの寝相は怖い。ゆっくり音を立てないように2段目にあがるとさすがにミイが薄目をあけてしまった。

「ごめんね、ミイ。横につめて」

すると彼女は何も言わずに寝返りをうって横をあけ、またすぐに寝息を立て始める。ミイが隣にいてくれる、こんな心強い夜はない。そう思って安心して眠ることが出来た。


翌朝、用意されていたムーミンパパの古いバッグを背負った。寝袋とロープ、たくさんの食べ物と水筒。鍋。

「気をつけていってくるのよ」

ママが声をかけてくれる。駆け寄るとやさしくハグをしてくれた。

「レディなら大丈夫」

頷くとより一層強く抱き締めてから送り出してくれる。

「レディ!早く行くよ!」

もう少し別れを惜しみたかったが、ムーミンが数歩先に駆け出し私を呼んだ。

「すぐに帰るわ!ママ!パパ!待っててね!」

跳ねる鞄を抑えながら走ってムーミンの後を追った。


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