この日のために貯めていた廃材や薪を荷台に積んで、拓けた場所へやってきた。
夏至の日は大きな焚き火をするのが古くからのならわしなのだ。
お昼のサンドイッチをつまんでからもうだいぶ経ったというのに、まだまだ高いところにあるお天道さまの下ひとりで薪を組み始める。すると間もなくして、またたくさんの薪をムーミンたちが持ってきてくれた。

「遅れてごめんね、レディ。スニフのやつが何度も休もうとするからさ」
「だってこんな重いもの、持って歩けば疲れるに決まってるじゃないか」
「あはは、ご苦労さま。いっぱい持ってきてくれてありがと。そこにジュースあるからちょっと飲んで休みなよ」

そういうとスニフは一目散に木いちごのジュースが入ったポットに駆け寄っていく。笑いながらそれを見ていると、フローレンが組み途中の薪を覗き込んで目を丸くさせた。

「わたしたちのと合わせたら今まででいちばんの大きさに焚き火になりそうだわ」
「大きい方がいいわ、その方がきれいだもの」

その後ろからミイとムーミンも覗き込み楽しそうに言う。そしてムーミンはわくわくが抑えきれないという風に薪を1本手にとると組み途中のものの中に組み込んだ。それに続いてみんなもそれぞれ薪を手に取りそれに倣う。それからミイがスニフにあんたも早く手伝いなさいと大声で言った。この子たちは元気だなあ。

「ママがたくさんごちそうを用意していたよ、あとでパパたちと持ってきてくれるって」
「やったあ、夏至の日のごちそう大好き」

夏野菜のピクルスに夏のスープ、焼き魚に燻製にした肉、それにデザートのケーキ。きっと想像の倍以上の味と量の料理をママは用意してくれるだろう。
たくさんのごちそうを想像するだけでいままでの疲れが吹っ飛んだ。
それにごちそうをたくさん食べたあとは焚き火の周りで踊るのだ。まだまだ疲れたなんて弱音を吐いている場合ではなかった。
そうしてみんなでせっせと薪を組んでいるとフローレンが近づいてきて小さな声で言った。

「ねえ、レディ。これが終わったら花畑に行きましょう。一緒にして欲しいことがあるの」
「うん、いいよ。あとでわたしも髪飾り作りに行こうと思ってたし」

彼女はミイたちには内緒よ、なんて言ってそそくさとその場を去っていった。なんだろう。
そう思った矢先だ、今日のパーティーの招待客のひとりがまた顔を出した。

「やあ、みんな。これも使ってくれよ」

スナフキンだ。彼はそう言っていくつかの木切れをわたしに差し出した。それを受け取り、木切れを見てふと気がつく。

「わあ、ありがとう・・・これ、なんの木?」
「気にしなくていいんだよ」

その木切れにはよく見ると「・・・べからず」なんて言葉の切れ端が所々にあったが、スナフキンが気にしなくていいというので見なかった振りをして薪の中に放り込んでおいた。
そう、細かいことなんて気にしている暇はないのだ。わたしは怪しい木切れのことなど頭の隅においやって、パーティー会場の設営に戻っていった。

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