「レディ、これから絶対に口を利いてはだめよ。大変なことがおこるんだから」
「はいはい」

フローレンがそう真剣な顔で言うので思わず笑って頷いた。夏至の日の夜、枕の下に9種類の花を置いて眠ったときに見た夢は全て叶うと言う古い言い伝えを聞いた彼女はそれをやろうと言い出したのだ。
真剣な面持ちのまま、きれいな花を探すフローレンを横目にわたしも気に入る花を探す。古い言い伝えには疑い半分だけれども。
それよりわたしは今晩お酒をたくさん飲んだ方が今年の作物の収穫高がよくなるなんてうらないの方が気になってたりして。ふふふ。
そんな邪なことを考えながら好きな色や形の花を摘んだ。そのときだった。

「あんたたち、なにやってるの?」
「夏至の占いのために花を・・・っあ」

ひょこんと花の中から顔を出したミイの言葉につい何も考えずに返事をしてしまった。フローレンはまんまるの瞳をさらにまるまるとさせてわたしを見ている。
ついうっかり喋ってしまった。あんまり邪なこと考えてるからだぞ、なんてもうひとりの自分の声がする。
あたしなんかした?とばかりにきょとんとしているミイの横に座り込んで項垂れた。

「ミイ、もしわたしになにかあってもわたしのことずっと忘れないでね」
「なにいってるの、レディ」

いいうらないに対して半信半疑でも、悪いうらないに対しては変に気にしてしまう損な性格なのだ。
夏祭りのうらないは始めたら最後までやらなければいけないとは言うけれど、わたしはどうも続ける気にならなくて項垂れたまま手元の花で今晩のお祭りで着飾るための花かんむりを編み始めたのだった。

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