うんと暑い日のこと。海へと向かっていたフローレンはレディの家の前を通りかかるとその光景に丸い目をさらにまん丸にした。

「まあレディ!引っ越しちゃうの!」

家の前にはずらりと家具が並びまるでフリーマーケットか引越しかといった具合だった。
しかしその声に驚いたレディは慌てて頭にまいた三角巾を取り去り否定する。

「違うわ、フローレン!あんまりにいい天気だから家中の布製品を虫干ししたくなったのよ」

そしてそう言うと手に持っていた2つのクッションをさんさんと日が照っている草原に置いた。
どうやって運び出したのか大型のソファやオットマン、ベッドのマットレスからこの時期に不釣り合いな羽毛布団や冬物のコートまであたりに転がっている。フローレンはまるでフィリフヨンカ夫人みたいだわと小さい声で呟く。
それからまだなにかを家から引っ張りだそうとしてるレディに手伝うわと声をかけて家へと入っていった。



「これ素敵ね」
「手伝ってくれたお礼にあげるわ」

ついには屋根裏までひっくり返してしまい、レディの荷物たちは昼前にはみんなさんさんと日光浴することになった。
その中で綺麗なスカーフを1枚見つけたフローレンはそれを貰ってご機嫌で身につけた。
どうかしら、とくるりと1回転。レディは虫干し中のソファに腰掛けて似合う似合うと微笑んだ。
そこへひょっこりスニフが顔を出す。

「やあレディ。まさか君引っ越すんじゃないだろうね」
「違うわスニフ!レディったらいい天気だからといって家中のものを虫干ししてしまったのよ」

そして彼にフローレンが対応した。その答えにスニフはよくやるよと呟いてどっかりとベッドのマットレスに腰かけた。

「へえー、でもムーミン谷中で噂になってるよ、君が引っ越すんじゃないかってね」
「まさかあ」
「ホントだよ、ほらムーミンとミイもきた」

そんな彼の言葉のとおり、振り向けば丘の向こうからムーミンとミイが駆けて来るのが見えた。そしてミイはきっと、ここへ来れば今日3回目の同じ質問をするのだ。
うーん、こんなことになるのなら少しずつやればよかったかも。片付けるのも大変だし。でもまあこれだけ頭数が揃えばあっという間に終わるかな。なんて邪な考えを胸にレディはソファの上に丸くなった。スニフはマットレスの上、フローレンは薄手のシーツの上に寝転びあくびを始めている。
そう、今日はいい虫干し日和で太陽はぽかぽか、つまりはいいお昼寝日和でもあるのだ。そう思った矢先、レディはムーミンとミイの到着も待たずにがくんと寝落ちてしまった。

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