赤く熟れたラズベリーをいくつか摘んでは籠に入れる。そしてまた少し移動しては同じことを繰り返した。
「あ、レディ」
「あらムーミン。ごきげんよう」
そして籠が真っ赤なラズベリーで埋まるころ、茂みからひょっこりとムーミンが出て来て目をまん丸にして驚いた顔をした。
「この場所はぼくしか知らないと思ったのに」
「ごめんね、見つけちゃった」
ラズベリーがたくさんなっている森の奥の秘密の場所。この間散歩をしていてたまたま見つけたので今日は籠を持ってやってきたのだ。まさかムーミンもこの場所を知っていたとは。
「いいんだ。森はぼくだけの場所じゃないし、それにレディが籠いっぱいに摘んでもまだまだたくさんあるもの」
彼が籠の中を覗き込む。これでシロップや木いちごジュース、ジャムが作りたくてついたくさん摘んでしまった。木いちごジュースが特にすきでたくさん作りたかったのだ。あの酸味と優しい甘さがたまらない。
そんなことを考えている隙に、ムーミンが籠の中のラズベリーに手を伸ばして1つを口に入れた。途端に顔をしぼませる。
「わ、少し酸っぱいな」
「そうかな?砂糖をたくさん入れてシロップにすればちょうど良くなると思うよ」
そう言いつつも、ムーミンのその顔が面白くて笑ってしまった。彼はちょっとムッとしたように茂みから出てくる。その手にはかごが。きっと彼もママのお使いでこれを摘みに来たのだろう。
「ごめんね、ムーミン。怒らないで。これ少し分けてあげるから許して」
「それだけじゃダメ、籠いっぱいになるまで手伝ってくれなくちゃ」
そう彼はいたずらっぽく言った。肩を竦めて笑う。ちゃっかりしている。
「うーん、もうしょうがないなあ。ムーミンったら」
「そう言わないで。レディも家で一緒にシロップ作ろうよ」
「そうするわ、お誘いありがとうムーミン」
みんなで作った方が楽しいもんね。そう思い、わたしは再びラズベリーの茂みを掻き分けるのだった。

prev next

back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -