摘んで来たきのこを越冬に備えて天日干しにして乾燥きのこにした。スープにいれてもバターで炒めてもおいしいし日持ちもする。最高のごちそうだった。
軒下に干したたくさんのきのこを回収していると、スナフキンが通りがかるのがみえた。声をかけるべきか、迷っているうちに彼はわたしを見つけ、こちらにやってきた。
「やあ、レディ」
「こんにちはスナフキン、散歩?」
「うん、明日の夜明け前にムーミン谷を出ようと思うから」
「あ、そうなんだ」
ムーミン谷はうんと冷えてきたしそろそろだと思っていたがいざ知らされると寂しいものだった。
きっと彼がこの谷を去ればムーミンたちも眠りについて谷は静かになる。しんみりとする中、スナフキンはもう別れを惜しみ終わったようでこの場を立ち去ろうとした。
「じゃあレディ。会えてよかった、元気でね」
「待って」
彼がムーミン谷の秋を連れて行ってしまうのを1秒でも遅らせたくて、つい呼び止めてしまった。彼は無言で振り向いて首を傾げる。
「きのこあげるから、待ってて。そんなに重くないから旅に持っていくといいわ」
「そんな、悪いよ。君の分だ」
「いいの、作りすぎて余っちゃうくらいだったから」
家に1度入って、キッチンからすでに袋詰めを終えた分を持ってきた。そして彼に手渡すとスナフキンは薄く微笑んで言った。
「ありがとう、レディ。なにでお礼したらいいかな」
「無事に帰ってきて、あの橋でハーモニカを吹いてくれたらそれでいいの」
以前彼の帰りが遅かったときはとてつもなく心配した。冬の猛威はよく知っている。
彼はその答えに対して声は出さなかったが力強く頷くと、今度こそそれじゃあお元気でと立ち去ってしまった。秋が去っていく、冬が始まる。
ため息をついて、彼の背中を見送った。

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