「レディ、お手伝いありがとうね。これよかったら貰ってくれる?」
トゥーティッキの家の掃除を手伝ったら卵を1ダースもわけてくれた。
「うれしい、ありがとう。何作ろうかな」
バスケットの中にたまごを詰めてうきうきと家路に着いた。しかしその途中でムーミン屋敷に立ち寄る。ムーミンママに借りたお料理の本を返しに行くのだ。
「おじゃましまーす、ムーミンママいるかしら」
裏口からムーミン屋敷に入り、ママを呼んだ。するとキッチンで困ったような顔をしたムーミンママに出会った。
「ムーミンママ、どうしたの?」
「あらレディ、いらっしゃい。でもどうしましょう。ケーキを焼こうと思ったのだけれども卵が足りないのよ。うっかりしていたわ」
それならちょうどいいバスケットの中からいくつか卵を取り出してママに渡した。
「トゥーティッキにもらったの、半分あげるわ」
するとママはとても喜んでくれて、なにかお礼をと言う。しかしこれは借りた料理本やいつもお世話になっているお礼でもある。
必要ないわ、と断るとそれでもこれでも是非もらって欲しいとミルクを一瓶くれた。
あんまり断るのも失礼なので、ありがたくミルクをバスケットの中の卵の隣に収めると本を返してムーミン屋敷を後にした。
そして家に帰る途中、ヘムレンさんの家の前の植物園の前で手入れをするヘムレンさんに出会った。
「こんにちは」
「おやおや、こんにちは」
「あら、小麦も育てているのね」
彼は珍しく花ではなく小麦を植えているようで物珍しくてそれをまじまじと見つめた。
「レディ、それは小麦じゃなくて大麦じゃよ」
しかしそう言われてまじまじ見つめても違いはよく分からなかった。
「実の付き方が全然違うじゃないか。ほら、これが小麦じゃ」
うーん、並べられればなんとなく違う気がする。曖昧に頷けばヘムレンさんは味もぜんぜん違うのだと言って家へと引き返し袋をとって戻ってきた。
「これが大麦粉じゃ、使ってみるといい」
「わあいい香り、ありがとうございます」
袋の口を開くと小麦にはない大麦のいい香りがした。それをまたバスケットに納め、今度こそそのまま家へと向かう。
しかしながら家のすぐ前でばったりとミムラに会い足を止めた。
「あら!久しぶり!」
「ミムラ!元気だった?」
そこからわたしの家の中で少し世間話をして、ふと先程もらったヘムレンさんの大麦粉の話をした。
「あらー、いいじゃない。わたしも使ってみたいわ。よかったら少し分けてくれない?代わりに小麦粉を少しあげるわ」
「いいわ、半分こしましょう」
ミムラは買い物の帰りだったらしい。彼女のバスケットの中の小麦粉とわたしの大麦粉を少しずつ交換した。
それからミムラが帰った家の中でわたしはバスケットの中身を取り出して頭をひねった。
うーん、どうしようかな。
そしてひとつ閃き、ボウルと計量カップを取り出す。
ミルクをカップ2と半分、小麦粉 カップ1、大麦粉をカップ4分の1。隠し味に塩をひとつまみと、卵を2個。
全てかき混ぜて、生地を少し寝かせているとノックの音。
「はあい」
「レディー!わたしよ、フローレン」
どうしたの、と扉を開けるとにこにことしたフローレンが立っていた。
「ジャムを作ったのだけど、ちょっと作りすぎちゃったからあげるわ」
あら、ちょうどよかった。フローレンを家に招き入れると寝かせた生地がちょうどいい頃合になっていたのでバターを溶かし熱したフライパンにおたまひと玉分をながしいれる。
「レディ、何を作っているの?」
フローレンがお皿を用意しながら訊ねた。
「クレープよ」
ママに借りた料理本に載っていたレシピだ。レシピを写しておいて正解だった。さっそく作ることが出来た。
薄いクレープはあっという間に焼き上がり、彼女が用意してくれたお皿にいれる。するとすかさず彼女が作りたてのジャムをクレープに盛り付けてくれた。
「おいしそうね」
「ほんと、早く食べたい」
フライパンを置いて食卓へ急ぐ。
「いただきます」
「いただきまーす」
お、おいしい。みんなからもらった材料で作ったクレープはふわふわもちもちで頬の落ちそうなおいしさだった。材料をくれたみんなに作ってあげよう。
そう思いつつも、今日焼き上げたクレープはみんなわたしとフローレンの中に消えてしまったのだった。

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