光った。暗闇をいちばんに駆け抜けていく閃光。そして轟音。雷。夕立ち。
森にきのこを摘みにきたらやられてしまった。まさか降るとは思ってはいなかった。しかし夕立ちだ、きっとすぐに止むはずだ。
濡れた髪を摘んで小さく息をつく。早く家に帰って暖かいお湯を浴びて、このきのこで暖かいスープをつくりたい。
なるべく楽しいことを考えながら時間が過ぎゆくのを待っているその時だった。嫌な気配がして遥か先を見つめる。
ざわざわとした空気が肌を撫でてぴりぴりと髪が逆立つ。
「ニョロニョロ・・・!」
ニョロニョロの大群が押し寄せてきたのが見えた。驚きと恐怖で足がすくんでうごけない。どうしよう。
するとどこからか私を呼ぶ声がした。
「レディーっ!」
振り向くと横から帽子を抑えながらスナフキンがずぶ濡れになりながら走ってくるのが見えた。
「スナフキン」
ほっとして声が漏れたのもつかの間、彼が私の手を取り引っ張る。そうだ、ニョロニョロから逃げなければ。そちらの方を見るとニョロニョロが雷を帯びて光ながらだいぶ近づいてきているのが見えた。
あのままあそこで立ちすくんでいたらびりびりと感電していたかもしれない。ぞっとしながら雨の中を走った。



「ありがとう」
案の定雨は早々に上がり、家のそばに着く頃にはだいぶ小雨になっていたので走る足を止める。
自然と繋いでいた手が離れた。
「どうしてあそこにいるのがわかったの」
「昼下がりに釣りに出かけたら、君が森へバスケットを持って歩いてるのが見えたから」
静かな小雨がふたりの間に降り注ぐ。
「それだけで?」
「レディはきっと夢中になってあの金床雲も見えなくなると思ったんだ」
その通りだ、恥ずかしくて俯いた。きのこがたくさん入ったバスケットの持ち手をぎゅうと握りしめた。
「あげくにニョロニョロの大群が森の方へ行くのが見えたから」
スナフキンがもう一度手を差し出してくる。
「持ってあげるよ」
行動を見透かされたのが恥ずかしくて彼の顔が見れなかった。せっかく助けてくれたのに半ば押し付けるようにバスケットを渡す。
「ありがとう、スナフキン」
「お礼はそうだな、君のきのこのグラタンとあのウイスキーでいいな」
ああ、すっかり味をしめられてしまったようだ。時折彼は理由をつけてあのウイスキーをねだるようになっていた。けして高いものではないのだけれども。
だが今回ばかりは命の恩人の願いだ。断れない。
わかったと頷くと彼は雨を滴らせた顔で満足そうに笑った。マカロニはまだあったかしら。

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