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「…ともだち、かぁ」


やっぱり、いい響きだってばよ。

俺ってば小せぇときから父ちゃんと母ちゃんがいないのが当たり前で、ずっとひとりだった。三代目のじいちゃんは優しくしてくれたけど、でもそれだけじゃ足りなくて、本当は、すっげー寂しかった。

なんでか知んねぇけど大人はみんな俺を避ける。“化け物”っつって突き飛ばす。俺ってば何もしてねぇのに、ずっとそんなだった。だからアカデミーでも友達なんて全然できなくて、誰かに俺のことを見てほしくていたずらばっかした。怒られることでもいいから、誰かに“俺”を見てほしかった。


そんな俺にもやっと今日、“友達”ができた。
ユウナの姉ちゃんは温かかった。こんな嫌われ者の俺を、ぎゅって抱きしめてくれた。ひとりじゃねぇって言ってくれた。初めて会ったのに、不思議な感じだったってばよ。


俺ってば頭悪ィから難しいことはよくわかんねぇんだけど、でも、ユウナの姉ちゃんだけは信じられる、そう思うんだ。ずっとひとりだった俺に初めてできた友達。初めて俺のことを認めてくれた人。まだ一回しか会ってねぇけど、そんでもユウナの姉ちゃんは俺の大切な人だ。


俺のことを認めてくれて、笑って友達だって言ってくれた姉ちゃんのことは、俺が絶対ぇ守る。まだまだ弱ぇけど、でも絶対ぇ守る。そう決めた。俺ってば一度決めたことは意地でも変えねぇからよ。

「約束ね」って結んだ小指も温かかったから。
俺もユウナの姉ちゃんみたいに、誰かに勇気とか希望を与えられるような人になりてぇ。ユウナの姉ちゃんみたいに、大きくて温かい人になりてぇ。そう思った。


「……明日、みんなに声かけてみよう」


ユウナの姉ちゃんに勇気をもらったから。俺はもう、ひとりじゃねぇから。
そんで友達が出来たらユウナの姉ちゃんに紹介すんだ!俺ってば友達が出来たんだぞ、っつってな!


ベッドに入って布団をかぶる。
目を閉じてユウナの姉ちゃんの優しい笑顔を思い浮かべながら眠った。




ともだちという響き




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