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二日後。
早朝から三代目の呼び出しがかかり向かった執務室。ノックをして扉を開けると、先日同様、煙管を燻らせてこっちに背を向けて椅子に座る三代目の姿があった。


「お呼びでしょうか」
「うむ。朝早くからすまんのう」
「いえ。それで、どういったご用件で?」


…あー眠たい。眠すぎる。口の中で必死にあくびをかみ殺した。
三代目が用意してくださった新居は、2LDKのアパートだった。たぶん、綱手様やシズネが帰ってきたときに泊まれるようにと広い部屋を探してくださったんだろう、ありがたい。

でも昨日今日は、入居してすぐだから頭がさえて緊張して全然眠れなくて、ほぼ完徹。まぁ一日二日寝なかったくらいでどうってことは別にないんだけど。綱手様の賭け事だとか酒だとかに付き合って丸二日寝ないことなんてザラにあったし。……今思えば私すっごい生活だったんだな。

ぼんやりとそんなことを考えていると、高級そうな椅子をくるりと返し、振り返った三代目。


「ユウナよ。お主、階級は?」
「中忍です」
「…やはりな」
「それが何か?」
「伝説の三忍と呼ばれる綱手の愛弟子であるお主が中忍というのは、ちともったいないと思うての」
「…はぁ」
「そこでお主には任務より先に、上忍試験を受けてもらおうと思うておる」
「上忍試験、ですか」


私が、上忍…。
上忍試験って言えば、中忍試験とは違って、二名以上の上忍からの推薦で受けられたはず。現役の上忍か特別上忍を相手に実戦形式で受験者の実力を見る試験ってやつじゃなかったかな。

実戦かあ。
十年間やってないから勘鈍ってないかな、と柄にもなく不安になる。それに長年里を離れていて戻ってきたばっかりの私に現役の上忍たちの推薦があるのは思えない。

そんな私の考えなど読めていたかのように、三代目はほくそ笑んでこう言った。


「推薦に関しては安心せい。綱手も一応階級は上忍じゃ。それにお主、たしかカカシのやつとも親しいじゃろう。彼奴からの推薦も加われば、木ノ葉でも屈指の実力を持つ二人からの推薦と言うことになる。何の問題もない」
「…はぁ」
「次に試験に関してじゃが、お主も知っておる通り実戦形式で行われる。十年の間実戦から離れていたとはいえ、そこまで案じずとも良い。お主の実力を見させてもらいたいだけじゃからの」
「…はい」
「…とはいえ、お主のその気がないのなら無理に話は進めん。急ぐ話でもないしの。自分の今後をゆっくり考え、そののちに返事をくれれば良い」
「はい」


なんと慈悲深いお方だろうか。
突然何の連絡もなくふらりと帰ってきた私に家を用意してくれて、その上こんなチャンスまで。正直言えば、階級なんてどうでもいい。中忍でも火影様の指示があれば上忍クラスの任務に出ることもできなくないし、だいたい私に上忍なんて階級は柄じゃない。

だけど、三代目がくれたこのチャンスを生かしたい。
こんな私でも師のために、里のために、少しでも役に立てるのなら。


気付けば私は、「受けます」と言っていた。
その答えを聞いた三代目は、孫を見るような顔をする。そりゃそうか、私この方の孫弟子なんだもんな、なんて考えていると、三代目は私に歩み寄って、ぽん、と肩に手を置いた。


「期待しておるぞ、ユウナ。わしと共に木ノ葉を守ってくれ」
「…っはい!」


ありがとうございます、三代目。
あなたの期待に応えられるように、精一杯頑張ります。

そして、綱手様。
あなたのような立派なくノ一になれるように、精一杯頑張りますからね。どうか、応援して下さい。


あなたを守れるだけ強くなります。必ず。




思いやり溢れる選択




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