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「…ナルト?」
ヨクに戻るように言ってクレーターのように抉れた地面の近くに降り立つと、その中にナルトらしき姿が見えた。
でもこの前見たナルトとは違うそんな姿に驚きが止まらなかった。隈取りがあるってことは仙術を使えるようになったってこと?でもなんで?そんな疑問を浮かべていると背後から聞こえてきた私を呼ぶ大切な、懐かしい声。
「…ユウナ、なのか…?」
「…綱手様、」
振り返るとそこには三年以上ぶりに見る師の驚いたような顔があって、
「っこの大馬鹿者!!!」
「!」
気づけばきつく抱きしめられていた。
私を怒鳴る声は少し震えていて。心配かけてごめんなさい、迷惑かけてごめんなさい。そう思うのに言葉にはならずに溢れるのはやっぱり涙で。
「…心配したぞユウナ」
「…ごめんなさい」
「生きていてくれてよかった…」
「…ありがとう、ございます」
いつになく優しい声にやっぱり涙は止まってくれなくて。でもそこではっとして体を離す。
「綱手様、カカシは…!」
「…すまない、ユウナ」
「!!」
やっぱり本当なんだ。本当にカカシはもう、いないんだ。
綱手様の苦しそうな表情にそう気付いてしまうとさっきまで張り詰めていたものがぷつんと切れて、途端に喪失感に襲われる。
私を闇から救ってくれて“独りじゃない”と教えてくれて、初めて恋というものを教えてくれたカカシは、もういない。
三代目も自来也様も、そしてカカシも。結局私は誰ひとり守れなかった。守りたいと、必ず守るとそう誓って里を出たはずなのに。
いつだって私は口ばっかりだ。“大切なものを守りたい”なんて偉そうなこと言ってたのに、誰ひとり守れてない。悲しみを広げてばっかり。情けない。本当に情けない。
「ユウナ」
「…」
「自来也と、ちゃんと別れをさせてくれて、ありがとう」
「!」
溢れる涙に顔を覆う私を綱手様はそう言って再びぎゅっと抱きしめた。
「お前のおかげで前を向けた気がするよ、自分の気持ちに正直になれた。本当にありがとう、ユウナ」
震える綱手様の声に、嗚咽が堪え切れないせいでただ首を横に振ることしかできなくて。
あのとき咄嗟に取った行動は間違ってなかったんだと思えた。
正直、あの後すこし後悔に襲われていた。綱手様に酷なことをしたんじゃないか、余計に苦しめることになったんじゃないかって。
でも、今の綱手様を見てやっぱりあの時にしたことは間違ってなかったんだと思った。
大切な人と別れるのは誰だっていつになったって辛い。だからこそお別れはちゃんとしなきゃいけない。ちゃんとさよならを言えれば、受け入れられるようなそんな気がするから。
綱手様が前を向けてよかったと、心から思った。
まぼろしがたり