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「カカシ先生が…」


任務が終わって帰ってくれば数時間前とはがらりと姿を変えた里があった。
状況を把握するため綱手様のところに行くと、すでにいたチョウジにそう言われ俺も一緒に急いでその場に向かった。その場所は瓦礫の山と化していて、その中にカカシの半身が埋まっていた。ゆっくりとそこから出して寝かせてカカシの肩に乗ったカツユ様を見たが黙って首を横に振った。

信じられなかった。
カカシはそんなに簡単にやられるほど弱くない。むしろ木ノ葉の忍の中でも実力はトップクラスだ、それは長いこと共に戦ってる俺もよく知ってる。

それに、こいつにはユウナがいる。
あいつが里抜けした日に見た以来こいつの沈んだ顔は見てねぇ。ただユウナが1日でも早く帰ってこられるようにと、ただでさえ忙しいのに誰よりもユウナの情報を集めていた。俺や紅がたまには休めといくら言ってもこいつは聞く耳を持たなかった。


『ユウナが今どこかで苦しんでるなら、早く助け出してやらなきゃならないんだ。それが俺の役目だと思うから』


疲れを隠しきれてねぇ表情でそう言って笑ったカカシ。

なぁ、お前はユウナを待ってたんじゃねぇのかよ。ずっとずっと、あいつがいつでも帰ってこられるようにってそう思ってたはずだろうが。3年間ろくに休みもとらねぇでユウナのために走り回ってたんじゃねぇのかよ。そんなお前が、ユウナのことがただ好きなお前がこんなところで死んでどうすんだよ。

ユウナは、どうすんだよ。


「…僕の、僕のせいでカカシ先生が…っ」
「…泣くなチョウジ。お前のせいじゃねぇ」


自分を庇ったせいだと泣きわめくチョウジをなだめながら唇を噛み締めたそんな時だった。


「アスマ!!」


数ヶ月ぶりに聞いた俺の命の恩人の、大切な仲間の声。
ゆっくりと振り返るとそこにはやっぱりユウナのやつがいて。視界にカカシを捉えたと同時に固まっちまいやがった。何が起こってんのかわかってねぇような表情でどういうこと、と聞いたユウナにチョウジが自分のせいだというと、この世の終わりみたいな顔して崩れ落ちやがってよ。

ユウナにとってカカシは闇から救い出してくれた大切な奴で、それと同じぐらい俺たちに向けるのとはまた違う感情があって。バカなこいつだから自分では気付いてねぇかもしんねぇけどよ。

そんなことを思いながら見つめるのは、ユウナがぽろぽろと涙をこぼしながら何度もカカシの名前を呼びながら揺するそんな姿で。その姿を見てるだけでユウナがカカシをどれだけ大切に想ってるか知ってる俺は胸が張り裂けそうだった。

そんな中で小さく呟いたユウナの声が聞き取れなくて聞き返すと、「殺してやる」なんて復讐心に満ちた顔でいうもんで思わず立ち上がるその肩を掴んでる俺がいてよ。


「落ち着け、ユウナ」
「…離してアスマ」
「お前がそんな顔するなんてカカシは望んでねぇ、それは俺もだ。お前にそんな顔は似合わねぇよ」
「…ごめん、でも早くペインを見つけないとこれだけじゃすまないんだよ」
「…」
「カカシの命は絶対に無駄にしない。だってカカシは…」
「…」
「私の大好きな人だから」
「!ユウナ、お前…」


「気付いてたのかよ」
そう言おうとした時には「カカシを頼んだよ」と真っ赤に腫らした目でにっ、と笑って空にいたヨクに飛び乗って行っちまいやがった。

気付いてたのかよ、ユウナお前は。
そりゃそうか、気づかねぇ方がおかしな話だよな。カカシはユウナのことが誰よりも大切で、ユウナもまたカカシが大切。そんなずっと両片想いのこいつらが気づかねぇわけねぇ。


「無茶すんなよ!」


遠くに見えるユウナにそう声をかけた。
つってもお前が無茶しねーわけねぇか、カカシのことならなおさらよ。お前は昔から天然のカカシバカだからな。そんなことを思いながらどこかちょっと気持ちが軽くなった俺がいた。


「アスマ先生、あの人って…」
「…あぁ。俺の命の恩人で大切な仲間で、そんでカカシの誰よりも大切なやつだ」
「…そっか、あの人が」
「チョウジ、泣いてる暇なんかねぇぞ。まだ戦いは終わってねぇ。カカシのためにも里のためにも、まだやることはバカみてぇにあんだからよ」
「…うん!」




見送る馬鹿の背




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