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「……うそ、」


遠くからペインと自来也様の戦いを奥歯を噛み締めながら見ていた。
私が行っても何もできないってわかってるのに、それでも飛び出しそうになる体を必死に抑えながら。自来也様が無事でありますように。ただそれを願うことしかできなかった。

でも、時に現実はとても残酷で。私みたいなものの願いは聞き入れてもらえないらしい。


「…自来也、様」


ゆっくりと海に沈んでいく自来也様。
ペイン六道と小南が去ったことを確認して慌てて着の身着のまま飛び込む。彼をひとりで、こんなに寂しいところで死なせるわけにはいかない。彼の帰りを待ってる人がいるから。あそこに、彼は帰らなきゃいけないから。

深く深く、海を潜る。
すると遠くにゆっくりと沈んでいく片腕になった自来也様をみつけた。

自来也様、あなたにはここでひとりぼっちになっちゃいけない理由があるでしょう。あなたならわかっているはずです。だから、どうか。

そう思いながら必死に手を伸ばして自来也様を捕まえた。
もう目を閉じてしまったその体を抱えて浮上する。


「…自来也様、起きてください自来也様」


背に刺さった棒を抜いてゆっくりと彼を寝かせる。何度揺すってみてもぴくりとも動かない。
満足そうに微笑むその顔はとても安らかで、それでいて冷たくて。

医療を心得るものとしてはわかってた。もうどうしようもできないことを。
それでも最後の希望は捨てられない。すがるような思いで指を噛み切って印を結ぶ。


「…口寄せの術」


ボフンと音を立てて現れた久しぶりのその大きな背中に自来也様を乗せて、木ノ葉へ向かうようお願いした。


「綱手の姉さんには何も伝えないのか」
「…いいの。それより早く木ノ葉へ、綱手様ならなんとかなるかもしれない」
「…わかった」


遠く飛び上がったヨクの姿に、目を閉じてまた祈った。

彼と最後に会うのはあなたしかいない。勝手ですみません、自来也様をお願いします。


「ずいぶん勝手なことをするようになったな、ユウナ」
「!」


突然背後から聞こえたその声に、弾かれたように振り返る。


「…ペイン、」
「まぁいい。どのみち自来也は助からない、いくら綱手であってもな」
「…っ」
「アジトへ戻るぞ」


言うだけ言ってすぐ背中を向けて歩き出すペインに気づかれないようにふっ、と息を吐いた。
きっと、綱手様なら私の意図を汲み取ってくれるはず。大切な人とはちゃんとお別れしたいはずだから。その気持ちは何より私自身が一番わかってる。

私のそんな想いが伝わることを願ってペインの背を追った。



想いよ届けと願い込め




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