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「…ユウナがアスマを助けたそうだ」
「!」


暁との戦闘で深傷を負って帰って来たアスマの手術を終えて綱手様が呟いた。
その言葉を聞いた俺は、やっぱりユウナには何か理由がある。そう確信した。


「シカマルの話では、ユウナが飛段という奴の戦闘スタイルを明かし、且つ敵の術にかかったアスマの治療をしてその後の指示もして去って行ったそうだ」
「…」
「アスマの傷は全て急所に入っていた。ユウナの治療がなければ、きっとアスマは助からなかったな」
「…」
「…さすがあたしの弟子、としか言えんな」
「…綱手様」
「なんだ」
「俺は、ユウナの里抜けには何か理由があったんじゃないかと思っています」
「!」


俺のその言葉を聞いた綱手様は目を見開いた。それは俺が何かを勘付いたと焦ったようにしか見えなかった。仮にも一里の長、それも五影のひとりともあろうお方がここまで感情を表に出すとは。

仮説が確信に変わった気がした。


「…何かご存知なんですね?」
「…」
「綱手様」


しばし無言の睨み合いが続く。
本当なら里長である綱手様を睨みつけるなんて言語道断だが、そんなことを言っている場合じゃない。

ユウナのことに関しては、一歩たりとも譲れない。


「…お前に隠し事は出来んな、カカシ」


諦めたようにため息をついて額を押さえる綱手様。
そしてそのあと、苦しそうに顔を歪めて床を睨みつけた。


「…ユウナが里を抜けた理由だが、」
「…」
「それは木ノ葉と…あたしを守るためだ」
「!」


あまりに衝撃的な綱手様の言葉に目を見開いた。
木ノ葉と、綱手様を守るため?


「…嘘、じゃないですよね」
「…自来也が仕入れて来た情報だ。間違いない」
「…」
「あいつがあたしの弟子だと知った暁は、言う通りにしなければ木ノ葉を潰し師を殺すと脅し勧誘した。…いや、勧誘というよりむしろ脅迫だ」
「…」
「…あいつは里のことをとても大切に想っていた、それはあたしも知っている。だからこそ、あいつに残された道は…」
「…里抜けしか、なかった」


綱手様の言葉を遮って続けると、悔しそうに頷いた。

そうか。だからあいつはあんなに悲しそうな顔で帰れないと言ったのか。
あいつが暁を抜けて帰ってしまえば、木ノ葉は潰され綱手様は殺される。普通なら何をバカげたことをと思うかもしれないが相手は常人離れした強さを持つ集団、もしそうと知らなくても奴らを目の前にすればそんなことは朝飯前にできてしまうと容易に想像できる。

ユウナにとって木ノ葉は守るべき大切な故郷で、そして綱手様は心から尊敬する大切な師だ。
その二つと暁を天秤にかければ、ユウナの選択肢は一つしか残されていない。…つまり、


『…たとえ身を切るより辛い選択をすることになっても、絶対この里を守りたいんだ』


里を抜ける前日、そんな風に俺に言ったユウナの言葉が脳裏をよぎった。
だからか。だからあいつはあんなに寂しそうなつらそうな顔でこう言ったんだ。

なぜ気づけなかったんだ。俺はあいつの何を見てた。

そんな自己嫌悪が心の中を支配する。
一番近くで見ていたはずの俺があいつの葛藤に気づいてやれなかった。


「…カカシ、前にも言ったはずだ。自分を責めるな。ユウナにそんな重荷を背負わせてしまったのはこのあたしだ」
「…」
「お前は、何も悪くない」
「…綱手様」
「…なんだ」
「その言葉、そのままお返しします」
「!」


俺がそう言い放つと、綱手様は驚いた表情を見せた。


「ユウナは、綱手様にそんな顔をしてほしいとは思っていないはずです。それにあいつは綱手様に木ノ葉を頼むとそう言いましたよね。そのあなたがそんな顔をしていてどうするんですか」
「…」
「俺は必ずユウナを連れ戻して、木ノ葉を守ります。必ず、この命に代えても」
「カカシ…」
「ですから綱手様。どうか、ユウナの帰る場所を守ってやってください」


深く、深く、頭を下げた。

あいつは必ず帰ってくる。
だから、あいつの居場所を俺が残しておいてやらなきゃならない。それが俺に出来ることだと思うから。


「…頭を上げろ、カカシ」
「…」
「そんなことはお前に言われずともわかっている。もとよりユウナはこのあたしの弟子だ。必ずここにいさせる。誰の異論も認めん」
「綱手様、」
「ユウナは木ノ葉の忍だ。あいつがいるべき場所は暁ではなく、ここ、木ノ葉隠れの里だ」
「はい」
「頼んだぞ…カカシ」
「はい!」


もう一度頭を下げ、執務室を後にする。


サスケが火の国に来ると言う情報が入ったのは、それから数日後のことだった。



たどり着いた真実




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