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「綱手様、お話があります」


砂から木ノ葉に帰還して、チャクラ切れの俺は病院にいた。
話しを終えた後綱手様を呼び止めると、他の皆に解散を告げた綱手様は窓に寄りかかるように俺に背を向けた。たぶん、これから俺が何の話をするのか分かっておられるのだと思う。


「話とはなんだ」
「…はい」
「…」
「……申し訳ありません」


その後ろ姿があまりに悲しそうで思わず謝っていた。
もう少し俺に力があればユウナを連れ戻せたかもしれない。そしたら今ここにユウナの姿があったのかもしれない。綱手様がここまで悲しまれることもなかったはずだ。そう思えば、自然とそんな言葉が出てきていた。


「…お前が謝ることじゃない。気負うなカカシ」
「…ですが、」
「ユウナがあたしに弟子入りを申し出て来たとき、言ったことがあるんだ」


綱手様は遠くを見つめたまま俺の言葉を遮って、懐かしむように口元を緩めた。


「たまたま仕入れた情報を持って木ノ葉に帰ってきたときに、ユウナが弟子にしてくれと懇願してきてなぁ。撒くのにも苦労したよ」
「…」
「最初は断ったんだ。それまで弟子なんて持ってなかったし、場所を転々としていたから持つ気なんてなかったしな」
「…」
「だが、いくら頑として断っても邪険に扱っても、あいつは何度も何度もあたしの元へ来た。弟子にしてくれと、あたしから学びたいと」
「…」
「そのときあいつが言ったんだ。“これ以上辛い思いをさせたくない人がいる。その人を守れるだけ強くなりたい”ってな。それであたしはあいつを弟子にした」
「…」
「…それはお前のことなんじゃないか?カカシ」
「!」


綱手様は振り返って優しい笑みを浮かべる。


「お前にとってユウナが大切なように、きっとユウナにとってもお前は大切なんだよ。それがどういう意味かまではあたしはわからんがな」
「…」
「あいつはおっちょこちょいだし天然だし筋金入りのバカだ。だけどあいつは真っ直ぐ自分の信念を貫く強い心を持っている」
「!」
「あたしがいくら厳しい修行を課してもあいつは一切根をあげなかった。むしろもっと鍛えてくれとクタクタの顔で言うんだ」
「…」
「もう今日は終わりだと言う度に言ってたよ。“強くなって帰るって約束したから、こんなところで終われない”とな」
「…っ」
「…カカシ。あたしは火影という立場上そう簡単には動けない。ユウナのところに行きたくてもそれは出来ないんだ」
「…はい」
「だから、その役目をお前に託したい」
「!」
「今回のことは残念だった。お前も悔しいだろう。しかし、ユウナが生きているということがわかってまずはなによりだ」
「…はい」
「ユウナは木ノ葉の忍だ。あたしの弟子で大切な仲間だ。必ず連れ戻してくれ」
「はい!」
「それから…、ちゃんと気持ちを伝えろよ」
「!」


そう言って俺の肩をぽん、と叩いて病室を後にした綱手様。
何もかもお見通しってわけですか。さすが火影っていうかユウナの師匠っていうか。
綱手様がユウナを大事に想ってるのは痛いほどわかっている。一番弟子ってのもあるし、さっきの話を聞いても節々にそう思う。そんな綱手様が俺にその役目を託してくださった。俺にためにも綱手様のためにも、必ずユウナは連れ戻す。


「…ユウナ、」


つらいだろうけど、もう少しだけ待ってて。
必ず迎えに行くから。




溢れるほどの愛を





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