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「…失礼します」


十年ぶりに帰ってきた故郷、木ノ葉隠れの里。
何年経ってもここは温かくて、なんだか落ち着くから大好きだ。

目の前の重厚な扉をコンコン、とノックして返事を聞いてから開けると、そこには変わらない人がいて安心したりするわけで。


「ほぉ、ユウナか!久しいのう」
「ご無沙汰しております、三代目様」


煙管を燻らせながらくるりと椅子を回して振り返った三代目様は、心持ちお年を召された気がする。
…それもそうか。だって十年だもんな。そりゃ私も成人してからずいぶん経ったわけだし、三代目様も年を取って当たり前だと苦笑いにもなるわけだ。


「十年ぶりか、ずいぶんと立派になりおって」
「そんなそんな」
「長い間、綱手の元で過ごすのは骨が折れたじゃろう」
「…えぇ、まぁ……ははは」


三代目と綱手様は、醸し出す雰囲気がどこか似ている。
すべてを包み込むような、そんな不思議な感じなんだけど。さすが師弟だ。


「して、どうしたんじゃ。急に帰ってきおって」
「あ、はい。綱手様から、木ノ葉に戻って三代目様の手助けをしろと言われまして」
「…そうか。綱手のやつ、相も変わらずか?」
「たぶん今日も元気にカモになってるでしょうね」
「……まだ懲りとらんのか彼奴は」
「まぁ、ここまでくればそれがあの方の魅力でもありますからね」


途端に頭に浮かんだ、綱手様のニタッと悪そうに笑った顔に苦笑いを浮かべると、三代目は呆れたような、でも弟子を想うとても優しい顔をしていた。

師弟関係って、やっぱり良いな。


「彼奴から聞いとるかもしれんが、今木ノ葉の里は忍が不足しておる。情けない話じゃが、医療忍者だとそれがより際立ってしまっておってな。そんな折に綱手の弟子であるお主が帰って来てくれるのは里としてとても助かる」
「…はい」
「ではさっそく医療班に顔を出してくれ。…と言いたいところだが、せっかく十年ぶりに帰って来たんじゃ。長旅で疲れておろう。まずは少しゆっくりすると良い」
「ありがとうございます」
「家はこちらで早急に用意しよう。その間お主は皆に挨拶でもしてこい。今後のことはまた改めて忍鳥を飛ばすとしよう」
「はい」


「失礼します」と頭を下げて部屋を出て扉を閉めれば、いつの間にか体に入っていた力が抜けてどっと疲れた。
三代目はとても優しくて思いやりに溢れた温かい方だけど、やっぱり里長。戦場を生きてきた経験や、威厳やオーラなんかがあって、面と向かって話すときはいまだに少し緊張する。

師の師だから尚更かもしれないなぁ。あの方は私の大師匠に当たる方だから。


ふーっと息を吐いて、肩を回した。
さて、久しぶりの木ノ葉だ。まず、どこへ行こう……あそこだよね。

すぐに決まった目的地に向かって歩を進めた。
どうやらあそこへの道は、十年経った今でも変わっていないらしい。



師弟というもの




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