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あれから三日が経って、尾獣が完全に抜き取られた我愛羅は息を引き取った。

なんだかナルトの行く末みたいで心が痛む。
彼らは好きで尾獣なんか飼ってるんじゃない。里の安全のために飼わされてるんだ。それなのにこうやって狙われて、そして殺される。

世の中理不尽なことばっかりだ。こんな世の中に吐き気がする。


「外に何人かいるよ。どうする?」


そんな白ゼツの声。我愛羅を連れ戻しに来た人たちか。


「どんな奴だ」
「木ノ葉の忍だよ。八人いる」
「!」


木ノ葉という言葉にまだ反応してしまう自分がいる。
ダメだ。忘れなきゃ。断ち切らなきゃ。


「名前がわかる奴はいるか」
「マイトガイと、九尾の人柱力。それにコピー忍者のカカシだよ」


…ガイとナルトとカカシが?なんで?


「九尾の人柱力か?ならオイラが行くぞ、うん」
「あぁ。デイダラとサソリ、お前たちで相手をしてやれ。だが九尾は急がなくてもいい。それからユウナ、お前も二人とともに行動しろ」
「…」


呆然とする私をよそに、デイダラとサソリを残して後は消えた。


「さーて旦那。九尾のお手並み拝見といこうか、うん」
「デイダラ。お前はなんでそんなに元気なんだ」
「三日間ジッとしっぱなしだったんだ。いい加減動かねぇとなぁ、うん」


カカシが来る。三年ぶりに会える。
なんで私はちょっと嬉しいんだろう。自分で会えなくなることを選んだはずなのに。

そんなことを考えているとドガンという轟音とともに入口の岩が破壊された。これは桜花衝だ。私が昔やっていたやり方と同じだからわかる。でも、誰が…?


「ユウナさん!」
「ユウナの姉ちゃん!!」


入って来た四つの影。そこにはやっぱりナルトとカカシがいて、その隣にはサクラちゃんもいる。
二人とも大きくなったなぁ。ずいぶん立派になって、なんて呑気なことを考える。


「ユウナ。一緒に帰ろう、木ノ葉に」
「…」
「みんなユウナのこと待ってる。だから…」
「…帰らない」
「!」
「カカシもあの日見たでしょ。私は自分の意思で暁に入った、それだけ。だから私は帰らない」
「…嘘つくなよ。ならなんで、お前はそんなに悲しそうな顔してるんだ」


そんなこと言わないでよ。戻りたくなるじゃん。
ダメだ。耳を貸すな。断ち切れ。


「ユウナの姉ちゃん!」
「…」
「一緒に帰るってばよ、木ノ葉に!」


やめて。やめてよ。


「ユウナ、お前は下がってろ、うん」
「…」


これ以上ここにいたら決意が揺らぐ気がして、差し伸べてくれるその手を掴んでしまうような気がして、素直にデイダラの言葉に従うことにした。

くるりと振り返り、みんなに背を向け歩き出す。
ごめんね、みんな。意気地なしでごめん。会えて嬉しかったよ。帰ろうって言ってくれてありがとう。それだけで私、これからも生きていけるよ。


「ユウナさん!!」
「!」


一際大きな声に足が止まった。サクラちゃんの声だ。


「私、綱手様に弟子入りしてユウナさんの妹弟子になったんです!綱手師匠もユウナさんのことを心配してます!帰って来るのを待ってます!私もいろいろ教えてほしいこととかいっぱいあるし…!だからお願いです!私たちと一緒に戻ってください!!」


半ば叫ぶように投げつけられたサクラちゃんの言葉に、温かい涙が頬を伝う。
あぁ、やだなぁ。やっぱり戻りたくなっちゃったじゃん。みんなに会いたくなっちゃったじゃん。

でも…


「…サクラちゃん、綱手様に伝えてくれる?」
「!」
「不甲斐ない弟子でごめんなさい、木ノ葉をお願いしますって」


それだけ言い残してまた足を進める。
震えたな、声。でももういいの。みんなの声が聞けただけで、帰ってこいって言ってくれただけで私はここでやっていけるから。



ごめんね、サクラちゃん。
私はサクラちゃんには何も教えてあげられないや。綱手様やシズネからいっぱい学んで、立派な医療忍者になってね。

ごめんね、ナルト。
あんたは負けるな。強くなれるから。躓いたっていい。転んだっていい。足掻いて足掻いて、木ノ葉を守っていって。

カカシ。
ごめんね、いつもいつも勝手で。でも私は戻れない。帰ろうって言ってくれてありがとう。みんなを、よろしくお願いします。

また会えてよかったよみんな。本当に、さよなら。


まだ溢れて来る涙を拭いながら、その場を後にした。




見捨ててくれない神様とやら





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