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上忍試験から三日が経って、三代目から呼び出しがかかった。
すぐに執務室に行きノックをして扉を開けると、この前と変わらない光景にカカシがいた。
「来たか、待っておったぞ」
「遅くなってすいません。試験の結果、ですよね?」
「うむ」
ああ、またどきどきしてきたよ。里に帰ってきてからどきどきしっぱなしだよ私。なんて考えながら優しい笑顔を浮かべる三代目から差し出された一枚の紙を受け取る。
「おめでとう。文句なしの昇格じゃ」
「おめでとう、ユウナ」
“本日より貴女を上忍に昇格することとする”そう書かれた紙をぼんやり眺めた。
私が上忍かぁ。嬉しいけど、本当にいいんだろうか。私なんてまだペーペーの未熟者なのに。そんな私に上忍なんて肩書きもったいなくはないだろうか。
「お主の実力はしかと見せてもらった。桜花衝も十分に使いこなせておった。ワシも試験官もカカシも、昇格に対して異議なしじゃったしの」
「…はぁ」
「ユウナよ。これからお主には上忍として任務についてもらうことになる。さすれば中忍のときより、より厳しい任務になることはお主も知っておろうな」
「はい」
「高ランクであるA、Sランクを中心に医療忍術の指導などもしてもらうつもりじゃ。忙しい日々になるとは思うが、くれぐれもよろしく頼む」
「…御意」
三代目に片膝をついて頭を下げた。そして立ち上がると、三代目は椅子に腰掛けた。
「では早速じゃが、待機所の者たちに挨拶でもして来い。懐かしい顔もおるじゃろうしな。カカシ、案内を頼む」
「了解しました」
「挨拶が済めばユウナは帰って良い。早速明日から働いてもらうからのォ。それから、カカシ。お主にはこれじゃ」
そんな満面の笑みの三代目から差し出された紙を受け取って目を通したカカシは口布越しでもわかるほどに顔を引きつらせた。え、なに、なんかやばいことでもしでかしたのあんた、なんて思ってると紙をポーチにしまって三代目に浅く頭を下げてすたすた、と出て行ったカカシを私も頭を下げて慌てて追いかけた。
「ちょ、どうしたの!」
「…どうしたもなにも、またこれだよ」
「これ?」
主語を言ってよ主語を。話がさっぱりわかんないし。
すると、立ち止まったカカシはめんどくさそうに頭をがしがし掻いてぽつりと言う。
「俺さ、ここ数年担当上忍やってんだよね」
…マジでか?あのカカシが?あの、はたけカカシが?
「…ま、昔の俺を知ってたらそうなるよね」
「ま、まぁ」
「とは言っても下忍を受け持ってるわけじゃないんだ。ユウナも下忍になってすぐ試験あったでしょ?班決めのあと」
「あー、うん」
「あれで俺は先生と同じことやってるんだけど、それに合格できるやつらがいなかったから全員アカデミーに戻したんだよ」
「今年もまたそうなるかなぁ」
と遠い目をするカカシに苦笑いを浮かべた。
ミナト先生から受け継いだってことはあの“鈴取り”だ。
忍にとって一番大切なのはチームワーク。自分より仲間のことを考えられるか、それがちゃんとわかっているかを見る試験。まぁ、下忍になってすぐの野望と希望溢れるそんなときに冷静にできるもんでもないんだけど、それすらできてない奴らに忍になる資格はないってこと。なんかミナト先生とカカシらしいな、なんて思わず笑ってしまう。
「ま、今年はできる子たちかもしんないじゃん」
「…そう簡単にいったら俺もここまで苦労してないよ」
ガクッと落ちたカカシの肩にポン、と手を添えてまた笑った。
それぞれの道