「お疲れ様、ここで解散にしようか」
「はい」
「次の任務予定は明後日だから、みんなできるだけ体を休めておいてね」
「了解しました、お疲れ様です」
「失礼します」とみんながどんどん帰っていくのを見送って、私もほっと息を吐いた。
思ったより時間がかかったけど、どうにか朝になる前に帰ってこられたからいいとしよう。
…お腹減ったぁ。カカシ、何か作ってくれてるかな?なんか今日はカカシが作ってくれたご飯が食べたい気分なんだけどなあ。
そんなことを自覚した途端、思い出したように音を出すのが私の身体の仕組み。まったく、自分でも単純すぎて笑っちゃう。
「さて、私も帰ろっかな」
あ、その前にカカシに連絡しないと。
そのままささっと口寄せの印を結んで、“今から帰ります”っていう手紙を括り付けた忍鳥を空に飛ばした。さて、私とどっちが先につくか競争するとしようか。
むふふ、と笑って足に瞬身の術のチャクラを溜める私の耳に「ナツハさん!!」という叫び声が聞こえた。
「テンゾウ?どうしたの、そんなに慌てて」
「大変なんですナツハさん!カカシ先輩が……っ!」
「!?」
息も絶え絶えのテンゾウから聞こえた名前に背筋がぞっとするのがわかった。
「…カカシが、どうしたの?」
「…っ」
「テンゾウ」
「……」
身体中を嫌な予感が巡って冷汗が止まらない。
そんな予感を振り切るように、今にも震えそうになる身体や声を落ち着かせるようにしてるつもりなのに、否応なしに全身が身の毛だつ。
「…っナツハさん、まず、その殺気をしまっていただけますか」
「……ごめん」
自分を落ち着けようとするあまり、無意識のうちに殺気がだだ漏れだったらしい。
テンゾウの頬につーっと汗が伝ったのを見て、慌てて息を吐いて呼吸を整えた。
「…三代目様がお呼びです。至急、木ノ葉病院へ向かうようにと」
「…わかった。ありがとう、テンゾウ」
「僕も同行します。こちらへ」
「…ん」
テンゾウに続いて屋根を伝いながら、ぐっと唇をかみしめた。
「…来たか、ナツハよ」
「……三代目様」
着いた先は、木ノ葉病院の奥にある、集中治療室。
ガラス越しに見える愛しい人は、見違える姿で眠っていた。
「……っ」
「!」
つい、目の前の壁を殴りつけていた。
身体中を巡っていた嫌な予感が的中してしまって、そうせずにはいられなかった。
なんで、なんでカカシが。包帯に巻かれて、たくさんの管につながれてるの。なんで、目を閉じてるの。
なんで、こんなことになってるの…。