※夫婦設定ですが、死ネタ扱いになります。できるだけ温かくなるように心がけたつもりですが、苦手な方は閲覧をお控えいただきますようお願い致します。












私の主人は、あの日、朝焼けが里を眩しく照らす頃。私の腕の中で、密やかに、その激動の生涯に幕を下ろした。

幼い頃に両親を失い、それからずっと一人で戦ってきたあの人を。
仲間も師も失い、それでもなお一人で生き続けてきたあの人を。
私は、幸せにしてあげられたんだろうか。


主人は、私の全てだった。
数十年をともに過ごしたのに、彼の数十年をもらったのに。まだまだ、一緒にしたいことがたくさんあった。あの人が幸せを感じられるように、あの人が孤独を感じないように。私は彼を、あの人を、人生をかけて愛しました。

子供たちも巣立ち手を離れて、やっと、また二人の時間を過ごせると思っていたのに。
あの人と、緩く穏やかな時を、二人きりで過ごせると思っていたのに。

あんまりだよ、カカシさん。
早すぎるよ、ねぇ。


「母さん、今日はどこへ行くの?」
「…そうだねぇ」


あの人が亡くなって幾ばくか経ち、日常が戻りつつあるとは言っても、あの人のために人生をかけた私の、生きる理由がなくなった。

けれど私は、あの人の家内であると同時に、あの人との子の母親だ。みんなもう大人になり、家を出、一人一人立派に暮らしてくれているけれど。それでも私は、まだ、あなたの所には行けません。


「今日は、火影岩へ行ってくるよ」
「…そう。冷えるから、暖かくして行ってね」
「ありがとう」


だから、あなたと行こうと思っていた場所に、私は一人で行っています。あなたが隣にいないことがとても寂しいけれど、いつか私もそちらへ行きますから。

運命が私とあなたを引き裂いても、
行かないでとなりふり構わず叫んでも、
どうにもならないことも、この世界にはあるものだから。


「ねぇ、カカシさん」


いつか私がそちらへ行ったとき、迎えに来てほしいのです。
あなたと行きたかった場所、したかったこと。あなたが行きたがっていた場所、したがっていたこと。全て私が足を向けて、行なって、あなたの元へ、お土産話を持って行きますから。

ねぇ、カカシさん。私はあなたを──


「愛しています。」





これまでも、これからも。
fin.


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