「やっぱり落ち着くなぁ、木ノ葉は」


久しぶりの温かい大好きな空気をお腹いっぱい吸い込んで、そう独り言ちた。

一年の長期任務。
大戦によって各地に甚大に被害が出て、各里から数名ずつ支援復興任務が下された。各地を転々としたその任務も無事完遂し、帰ってきたのがついさっき。代替わりした六代目に報告を済ませてから、お気に入りの昼寝スポットであるここでごろりと寝転がっている。


「やっぱり木ノ葉が一番だ」


活気に溢れる人々の声、優しく香る緑の匂いにうっとりと息を吐いた。
良い思い出ばかりと言えないここだけど、自分が思っている以上に私はここが好きらしい。


「やっと帰ったんすか」
「!」


そんな声に閉じていた瞼をぱっと開くと、視界に溢れんばかりに映るのは、不機嫌そうに眉を寄せる年下の男の子。


「…なんだ、シカマルか」
「なんだってなんすか。人のことさんざん待たしといてそりゃねぇでしょ」
「ごめんごめん」


どうやら気を抜きすぎていたようで、不機嫌そうに隣に腰を下ろすシカマルの気配も気づかずにいたらしい。

一応、私の恋人らしいこの後輩。
とはいえずっと敬語は抜けないし、付き合う前から関係はほとんど変わらない。でもなぜかそんなのが落ち着くし、好きなんだ。


「長かったっすね」
「まぁ支援任務だからね、やることはたくさんあったから」
「俺待ちくたびれたんすけど」
「ごめんって」
「それにめんどくせぇってのにこんなもん買っちまったんすけど」
「?」


寝転んでいた体を起こし視線を向けると、耳を真っ赤にしたシカマルが差し出す手のひら。そこに乗ったものはあまりにも予想外で、思わず目を瞬いた。


「…なに、これ」
「一応、俺のもんになってくださいってことで」
「!」


そう言うシカマルから真っ直ぐに注がれる視線は、冗談やドッキリでもなく、嫌味なほど私の心にすっと届く真剣さを帯びている。


「で、返事はどうなんすか」
「…でも私、あんたより三つも年上だし」
「んなもん年とりゃ変わんねぇだろ」
「もうおばさん目前だし、」
「じゃあ俺もオジサンってことでいいっすよ」
「任務も好きだから家には入れないし、」
「ま、それはお互い様ってことでいいんじゃねぇすか」
「っ、でも、でも…」
「あー、めんどくせぇ」
「!?」


でもでもを繰り返してなかなか受け取らない私を呆れたように抱き竦めるシカマル。一年会わない間にどんどんと男らしくなっていたこいつに、思わず心臓が鳴った。


「あんたは黙って頷いときゃいいんすよ」
「…」
「俺が絶対幸せにするっすから」
「…ん」
「…っつーわけで、あんた明日から奈良チハルな」
「……!?」





「っ受けて立とうじゃないの!!」
「うっせーよ」

fin.


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